豊島逸夫の手帖

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FRBも日欧追加緩和催促か

2015年1月8日

「原油急落によるインフレ率低下が、利上げ判断に影響しないか」
「世界経済成長低下傾向が、利上げ時期を遅らせることはないか」

この二点が、7日公表された12月FOMC議事録について、筆者が最も注目したポイントだった。

まず、原油安については、「その影響は一時的」との議論が確認された。ちなみに12月FOMCが開催された12月16日の原油先物価格は54ドル。それが昨日は、やや反発したものの、48ドル。これで原油急落傾向に歯止めがかかるとの楽観論は極めて少数派だ。通年でも民間では「原油低迷長期化」見通しが多数派である。
しかるに、FOMCメンバーだけが、「原油安は一時的」と論じるところに、FRBと市場の見解の差を感じる。
但し、原油安が、総合評価では、マクロ経済に対するプラスの影響が優る、という点では、官と民も同意見である。
更に、今回の議事録には、「コアインフレ率が現水準であれば、金融正常化を進める」との、これまで明らかになっていなかった一節があった。これは、原油安により物価上昇率が低迷しても、利上げは敢行すると読める。しかし、その直後の文面には「その場合でも、参加者がインフレ率目標2%への回帰に相当の自信を持つこと」の一節を入れてヘッジをかけている。
とはいえ、原油市場にパラダイムシフトが生じているときに、「一時的」と楽観的なニュアンスをにじませることに、筆者は一抹の不安を覚える。

次に、世界経済低成長の影響。
ここでは、議事録の文面から、FRBまでもが、日欧追加緩和頼みの本音が透けて見える。
「金融市場は、海外の経済成長と日欧の金融政策への期待により重要な影響を受ける」
「数名のメンバーは世界経済予測を引き下げたが、他の数名からは、海外での政治対応の可能性への言及があった」
これは、経済が減速しても、各国政府が金融緩和策を採るので、心配には及ばない、と読める。
深読みすれば、ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁に、米国型本格量的緩和を催促しているかのような印象さえ受ける。
筆者の英文解釈は「日欧が追加緩和するという前提で、世界経済成長低下傾向が利上げ時期を遅らせることはない」ということになる。

総じて、最後の決断は、これまで繰り返し表現されたように「マクロ経済の出方次第」。利上げ時期が特定されるような表現で、金融政策の機動的運営を妨げたくない、との強い思いが伝わる。「相当の期間」超低金利維持から、「忍耐強く」機が熟するのを待つという文学的表現に変えたのも、金融政策の自由度を確保するためだろう。
FRBの自由度とは、民間予測が利上げ時期2015年年央に集中していても、マクロデータ次第では、「ちゃぶ台返し」もありうる、ということだ。
ちゃぶ台返しのショックを最小限に食い止めるために、今後のFOMC声明文では、形容詞・副詞の文学的表現で、行間に政策のベクトルをにじませることになろう。
「英文解釈相場」の様相が強まっている。

金価格も米利上げ時期についての不透明感が晴れないと、おおきくは動けない。価格が安定しているともいえるが。
今朝の日経朝刊商品面でも筆者がコメントしているとおり、ギリシャ危機でも、今回は、上昇も限定的だ。ドル高の流れがあるので。これは円安をも意味するから円建て金価格は依然堅調ということにもなる。

さて、今日の写真は、かりん蜂蜜。

2029.jpg東京にも早々とインフルエンザ「警報」が出され、外で喋ることが多い私にとっては、注意が必要な時期。
しかも乾いているので、喉はかすれがち。
そこで、昔から喉に良いとされる、かりんの蜂蜜漬けを常用しているわけ。熱いお湯に溶かして、ゆっくり、喉全体に沁み渡るように飲む。携帯用も常に持ち歩き。一昨日は、テレ朝の報道ステーションに出たので、傍に、これをしのばせて、喋った。聞けば、キャスターたちも、それぞれの方法で、この時期は喉の自己防衛しているんだね。

2015年