2015年5月19日
18日、シカゴ連銀エバンス総裁の「利上げは2016年の早い時期が妥当。」との発言が欧米市場で注目された。
ストックホルムで開催された国際経済会議での同氏講演は長文だが、結論は明快だ。
「インフレ率2%達成は2018年。インフレ率が2年以内に2%になる確率が五分五分になるまで緩和継続すべし。中期的にはインフレ率が2%を超えてオーバーシュートする確率も歓迎すべきこと。過激な意見に聞こえるかもしれないが、心配ない。国民は2009年から2018年まで2%以下のインフレ率に慣れきっているので、2%からの上振れリスクを歓迎するくらいのほうが合理的だ。」
このエバンス氏はイエレンFRB議長の懐刀ともいえる人物。
昨年までFOMC内でのタカ派の巨匠と言われたフィラデルフィア連銀プロッサー総裁とダラス連銀フィッシャー総裁に代わり、今年、投票権を持つメンバーに指名されたからだ。
生粋のハト派で、今年1月8日にも、利上げを早めるリスクをカタストロフィー(壊滅的)という強い単語で表現した。(詳細は、本欄1月9日付け「FRB幹部衝撃発言に安堵する市場」を参照されたい。)
そして、今回の大胆とも思える発言。
最新のFOMCは、「利上げ時期を明示せず、会合ごとに、マクロ経済データを吟味して、決める。」スタンスを明確にしている。それゆえ、多くを語らぬイエレン氏に代わり、ハト派エバンス氏が、議長の期待に応える発言をしている感じだ。
イエレン人事が的中とでもいえようか。
筆者も昨年12月から、「2015年の利上げはない。」と一貫してメディアで語ってきたが、その根拠の一つが、イエレン色に染まった新FOMC体制にあった。
なお、エバンス氏の講演は週明け18日。前週15日には、5月のミシガン大学消費者信頼感指数が88.6と、前年10月以来の低水準を記録。更に4月の米鉱工業生産指数も5月のNY州製造業業況指数も事前予想に届かず。1~3月期のGDP成長率低下要因を天候・ストの一過性とする見方に冷や水をかけられた直後のエバンス発言ゆえ、市場では注目されたわけだ。1~3月期はマイナス成長へ下方修正の可能性が高まり、4~6月期には回復の期待も萎みつつある。
家計部門が、原油下落による「臨時ボーナス」を消費に回さず貯蓄している実態がジワリ露呈されつつあるといえよう。事実、米国経済分析局がまとめた個人貯蓄率は、原油急落が加速した14年11月には4.4%だったが、3月には5.3%まで上昇している。住宅の資産価格がローン残高を下回るアンダーウォーターといわれる状況から未だに脱却できない家庭が多いのだ。
市民はいまだにリーマンショックの後遺症から癒えていないのに、金融政策が、いちはやくリーマンショックからの回復モードに入るのは、時期尚早ともいえる。
更に、切迫感を増すギリシャ・ユーロ離脱の可能性が、米利上げ時期に影響を与える可能性も浮上してきた。
かりに国民投票で離脱賛成とでもなれば、「ギリシャ不安はおりこみ済み」としてきた市場も、さすがに混乱しよう。株・ユーロが売られ、ドル高が再び顕著になり、利上げなどとても決定できない状況になるリスクをはらむ。
FOMC声明文でも利上げ議論で「インターナショナル」な要因考慮が併記されている。
なお、今週20日には、4月FOMCの議事要旨が公表される。多数派のハト派と少数派のタカ派の間で、どのような議論がかわされたのか。市場の注目度がいつになく高い。
金はドル安を受け、1230ドル台まで上昇後、1220ドル台で推移。円相場は膠着状態なので円建て金価格も上昇。
短期的には、今が、レンジの上限かな。あくまで、巻き戻し相場だからね。プラチナも金に連れて1160ドル台まで戻してきた。でも、まだ金よりかなり安く、割安感変わらず。
今日の写真はアテネ現地紙。「ロシアより愛をこめて。」懐かしい007シリーズをもじった見出しだね。
次は、大岡山の人気ドイツパン。ご飯やパンが旨いのは嬉しい。
先週土曜日経夕刊一面の金関連記事も一緒に。これはカラーで目立った。注目度高い記事だったらしい。
そして、このブログ書いていた昼休み時に、テレビの徹子の部屋に御贔屓愛之助クンが出てたので、しばらく見てた(笑)。
明日夜7時から、以下のネットで、大手町金融ビレッジにて公開収録の「金融闘論」(米利上げ後の世界)の模様を1時間ほど生中継します。これが30分の番組に編集されて、BSジャパンで後日、放映されるわけです。編集なしバージョンだから、何が飛び出すか分からず、面白いよ(笑)。
http://channel.nikkei.co.jp