2015年5月13日
よく、ドイツ人の金銭感覚が、合理的で堅いといわれる。借金までして消費することに抵抗を感じ、倹約を美徳とする。
国も財政規律を重視し、国債発行残高を極力抑えてきた。
その結果、ドイツの国債市場規模は、欧州内で、イタリア・フランスに次ぎ第三位となっている。
いっぽう、ドイツの経済感覚が、投資家の間では安心感を生み、独国債は安全資産として買われてきた。
そこに、欧州中央銀行(ECB)が、量的緩和政策の一環として、独国債を大量に買い始めた。
更に、ECBが買い支えるとの安心感から、機関投資家も独国債買い増し競争に参加。
年金などの長期投資家のみならず、ヘッジファンドなどの投機マネーも、欧州第三位の市場規模の独国債市場に参入したことで、まず、品薄状況が生じた。債券は買われれば、利回りが下がる。一時は10年債までマイナス利回りになるか、といわれるほど、買い進まれた。
そこに、4月の独消費者物価指数が、前年比0.3%まで上昇との経済統計が発表された。同時に原油価格が反騰したことで市場では俄かにインフレ期待感が高まった。
債券市場にとってインフレは天敵だ。
株式はインフレで育つが、債券はデフレで育つ。
そこで、まず投機筋が独国債を売り戻しに走ったことで、「劇場のシンドローム」現象が生じた。
満席の狭い劇場で、観客が一斉に出口に殺到するイメージである。
かくして、安全と思われていた資産の価格が乱高下すると、投資家は不安心理に襲われる。
こうなると、ECB量的緩和効果で史上最高値を更新していた独株価にも、急に割高感が強まり、利益確定売りが出始めた。
更に、欧州の安全資産=独国債売りは、大西洋を越え、米国市場にも波及。米国、否、世界の安全資産と言われる米国債まで売られ始めた。米10年債利回りも一時は1.6%程度まで下落していたが、直近では急上昇して、12日には2.2~2.3%台で推移している。
米国の場合は、量的緩和を既に終了しているので、市況の法則から見ても、金利が上がって不思議はない。逆に、今まで、上がらなかったほうが異常だったといえる。
とはいえ、FRB利上げ開始時期に神経質になっている株式市場にとっては心地よい現象ではない。
いかに利上げが織り込み済みとはいえ、いざ、市場実勢金利が上がり始めると、市場心理は委縮しがちだ。
ここで、市場のセンチメントを変えるには、もはや、金利やマネタリーベースを調整する金融政策だけでは限界がある。
マクロ経済的にいえば、賃金が上昇して、貯蓄率が下がり、消費性向が上がり、かつ、労働生産性が向上することが、持続的景気上昇実現のための条件となる。
そのうえで、金利が上昇するならば、「良性の症状」といえよう。
国債利回り波乱、FOMC利上げに脅える市場だが、冷静に見れば、利上げは本格的経済回復の証だ。ダドリーNY連銀総裁の言葉を借りれば「利上げは祝い事」であるはず。
但し、祝賀気分に浸るには、まず、金融政策への過度の依存症を克服する必要があろう。所得再配分などの財政政策・TPPなどの通商政策の出番である。
バーナンキ前FRB議長も最近のブログに書いているが、公的インフラ整備への投資なども具体的政策として考えられる。「米国経済長期停滞論」を唱えるサマーズ元財務長官も、インフラ投資を重視している。グリーンスパン元FRB議長は、とにかく、労働生産性を上げることを考えるべし、と常に説く。
なお、バーナンキ氏は、ブログでドイツの経常収支黒字を問題視している。財政均衡を重視するあまり、輸入品への支出を含む国内消費が抑制されているとの批判だ。
筆者流の解釈によれば、ドイツはギリシャに経済構造・財政改革を強く求めるが、自らの倹約文化を変える構造改革も考えるべし、ということになろうか。
イソップ物語に例えれば、アリさんのドイツが、多少、キリギリスさんになるときがあっても良いのかもしれない。
そう考えれば、お堅い気質のドイツ発行の国債の利回り乱高下も、なにやら象徴的現象に思えてくる。
さて、日本の株式市場では、シャープが99%減資とか、東芝が不正決算疑惑で、いずれも一時ストップ安。財務諸表の数字が信じられなくなると、株そのものへの不信感が強まる。その反動で、株式セミナーでは参加者から実物資産としての金への興味が示されるのだろう。
そして、今日の写真。
筍のゼリー寄せ。緑野菜を擦ったのがのってる。
大きな桑名の蛤。
身の厚い笹かれい。
どれも、祇園のらく山にて。
そして、京都駅で近江のゴルフに向かうところ。
今日は良いショットが打てますようにお願い。
(結果は、神様は冷たい仕打ちだった。。。笑)
最後に、マイナビで、「25歳のあなたへ」というコラムを副代表治部れんげと始めました。↓