2015年9月18日
今年最大のマーケット・イベントといわれた9月FOMCだが、結局、「政策金利据え置き」となった。その瞬間、NYSE(NY証券取引所)のフロアーには、安堵と落胆の入り混じった、うめきのごときコーラスが流れた。
既に、「利上げ見送り」を見込むかのように、世界同時株安現象が生じていた。CMEがFFレート先物から算出するFEDウォッチが示す9月の利上げ確率も20%前半まで下落していた。それでも、エコノミストの9月利上げ予測は、真っ二つに割れていた。市場も、完全に利上げの可能性を排除することは出来なかった。マーケット関係者の願うベスト・シナリオは「ハト派的利上げ」であった。今回利上げに踏み切るが、声明文や記者会見で、今年の利上げはこれで打ち止め、というニュアンスを色濃く滲ませるというシナリオだ。これなら、利上げ有無の不透明感がやわらぎ、かつ、基本的緩和状態は続くとのお墨付きも得るからだ。
しかし、またも「据え置き」となり、不透明感が更に強まり、市場のボラティリティー(価格変動)が高い地合いが続くことになった。FOMC声明文発表直後から記者会見進行の間に、NY株価は、急騰後、急落と乱高下を演じた。
更に、マーケットが当惑したことが、利上げせずの決断理由として、「中国など」の海外要因が、これまでになく、頻繁に語られたこと。「FRBは、それを理由に利上げをためらうほど、中国経済を懸念しているのか」との懸念が市場に広がったことは間違いない。
これまでは、一貫して、利上げ最終決断は、米国マクロ経済データ次第とされてきた。そこに、例えば、中国経済成長率とか上海株価のデータも加わるのか、との当惑感が伝わってくる。
更に、今回のFRB経済予測では、PCEインフレ率が、6月時点の0.7%(2015)から0.4%と大幅に引き下げられた。理由は、例によって原油安とドル高の物価下落効果である。今回も、「一時的」要因としたが、これまでも常に「一時的」と語られてきた。2016年は1.7%、2018年には目標とする2.0%に達するとの予測は信頼できるのか。
そのうえで、利上げ開始時期は、いつになるのか。
記者会見では、10月も排除せず、年内には実施が多数派と語った。
とはいえ、FOMC参加者の政策金利予想によると、マイナス0.125%が1人、プラス0.125%が3人、0.375%が7人、0.625%が5人、0.875%が1人となった。2015年には利上げなしとの見方が4人現れたことが注目される。
なお、前回6月時点には、0.125%が2人、0.375%、0.625%、0.875%が、それぞれ5人ずつであった。
0.875%が4人減り、0.375%と0.125%が2人ずつ増えた。しかも、マイナス金利が1人現れた。これについては、記者会見で早速聞かれていたが、殆どまともな考慮対象ではないという言い回しと表情であった。この「1人」は、市場では、今年勇退するので、かなり自由に発言しているコチャラコタ・ミネアポリス地区連銀総裁と思われている。それより、市場が注目しているのは、イエレン議長とフィッシャー副議長の予測が、どの水準かということ。0.375%あたりではないか、など、様々な観測が流れる。
以上を総合して、利上げ開始時期はいつになるだろうか。
CMEのFEDウォッチでは、10月の利上げ確率が16%、12月が45%、2016年1月が54%、3月が67%、6月が81%となった。ちなみに15日時点では、10月41%、12月59%、1月67%、3月77%、6月88%であった。市場の予測は、かなり後ずれしている。
15日時点での9月利上げ確率が25%と、エコノミスト予測よりはるかに低かったので、FEDウォッチの信頼度が高まっている。
本欄では「どちらが正しい、FRBか市場か」(1月29日付け)、「イエレン人事的中。2015年利上げ見送りか。」(5月19日付け)、「雇用統計後、利上げ2016年説も浮上」(7月3日付け)と書いてきたので、全く違和感はない。
特に、中国要因は構造的なので、12月までに見通しが開けるとも思えない。原油価格が低迷から脱するとも思えない。
市場は、「利上げ執行猶予数か月」と受け止めている。執行猶予期間中は期待と不安の間に揺れる相場となりそうだ。
金プラチナは、束の間の安堵感から10ドルほど上昇した。
英語の勉強したい人のために昨日の英文原稿はコチラ↓
http://asia.nikkei.com/Politics-Economy/Economy/US-Japan-central-banks-could-act-together-in-October
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