2015年12月9日
消費者には吉報といえる原油安だが、当惑しているのがFRBであろう。タイミングが悪い。12月FOMC開催の前週である。これまで、原油安のディスインフレ効果は「一時的」として、目標インフレ率達成には自信を示していた。しかし、原油30ドル台の持続が懸念されているときに、本当に利上げに踏み切れるのか。
「12月利上げするが、原油等の外的要因を考慮しつつ、2回目以降の利上げは、より緩やかなペースで進める。」
これまでのイエレン氏の講演・議会証言から推して、おそらく、この程度の表現になるのではあるまいか。
とはいえ、リスク・シナリオとして、来週のFOMC前までに、原油価格が30ドル台前半まで続落というケースも想定される。前回のFOMC時には、40ドル台前半であったので、10ドル幅の急激な状況変化となる。9回裏の逆転劇にも備え、気を抜くことは出来ない。もし、利上げ見送りとなった場合の市場の狼狽は計り知れない。ここまで醸成されたコンセンサスが、ちゃぶ台返しとなるのだから。日本株も、この不透明感を嫌う。
筆者は、スイス銀行時代に、NYMEXのフロアートレーダーを体験しているので、昨晩は現場の後輩たちと話した。
「ユーロ売りを深追いして、やられたばかりなので、この原油急落も、ほどほどで手仕舞うよ。」
「イスラム国が、原油生産施設を狙う行動に出れば、さすがに地政学的要因で買いが出るかも。」
などと語る。
昨晩の原油先物価格(WTI)を見れば、いきなり36.64ドル(期近)まで続落したが、その後、一転38.58ドルへ急騰。引けは結局37ドル台で終わった。一日の価格チャートを見れば、まさに乱高下そのものだ。空売り筋の手仕舞い買いで上がったところは、新規の売りが相場の頭をたたく。特にCTA(コモディティー・トレーディング・アドバイザー)という超短期売買に徹するヘッジファンドが、相場を引っ掻き回している。
経験則だと、急落後のこのような乱高下は、当面の底値形成局面となることが多い。
NY株式市場も、同時進行中の原油先物市場を見つつの展開。
クリスマス休暇も迫るこの時期。今年最後のサプライズに、市場は身構えている。
貴金属市場の反応はリスクオフ。
金が買われ、プラチナが売られている。
マネーと商品の2面性を持つ金と、産業用素材であるプラチナの違いだ。
NYMEXのフロアートレーダーたち
ピット外のブースでは、アルゴリズム売買モニター画面に釘づけ。
いずれも筆者撮影。
豊島逸夫 公式サイト www.toshimajibu.org