豊島逸夫の手帖

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市場の注目は二回目の利上げ時期へ

2015年11月9日

10月雇用統計の事前予測をはるかに上回る非農業部門新規雇用者数(NFP)と平均時給増により、米利上げ12月開始は、ほぼ確実と見られる。

ただし、9月と10月の振れが大きすぎることが気になる。

9月が14万2千人。10月が27万1千人。

元々、月次で振れが大きな統計と言われてきたが、それにしても、ビッグ・サプライズが2回続き、市場の見方も利上げ2016年へ先送りから12月利上げ確実に180度転換した。

12月FOMCまで、あと一回、11月雇用統計が控えており、ビッグ・サプライズが2度あることは3度あるのか。9回裏逆転の可能性も捨てきれない。

CMEのFFレート先物から算出された12月利上げ確率も70%を超えたが、30%の利上げ見送り確率も残っている。

まず、12月利上げを前提として間違いないと思うが、過去にバーナンキショックなど、ちゃぶ台返しを喰った記憶も生々しく残る。上空でシートベルト解除のシグナルは出たが、まだ外すのは早計だろう。

市場予測も「よほど中国・新興国経済が悪化しないかぎり」などのヘッジはかけられているが、「想定外」が起きることが、市場における「新常態」なのだ。

同時に、週末にヘッジファンドなどと話してみると、市場の関心は、既に、「2回目の利上げ時期」にシフトしている。

12月、1月と連続して利上げするシナリオは殆ど考えられていない。2016年3月か6月か、などがもっぱら議論されている。

イエレン議長は、緩やかな利上げを繰り返し明言しているが、一年の利上げ回数が2回から4回まで、見方は分かれる。

更に、今回の利上げサイクルの落としどころも注目度が高まりつつある。

9月時点のFOMC参加者の金利予測(いわゆるドット・チャート)によれば、2018年末で、2.875%から3.875%のレンジで割れている。更に、「長期」という項目もあり、そこでは、3%から4%のレンジに分布しているが、3.250%と3.500%に予測は集中している。

ところが、FRBスタッフや市場関係者は、この「利上げ軌道」を、かなり低めに予測している。

例えば、2016年末の金利予測は、FOMCメンバーが、0.875%から2.875%の広範囲レンジに分布しているが、CMEのフェッド・ウオッチでは、0.50%から1.25%のレンジに集中している。

更に、FOMC参加者とFRBスタッフの見通しの違いが、誤って公開され、スタッフのほうが、かなり低めに見ていることが、露わになっている。これについては、日経電子版7月30日付け「FRB情報漏洩後のFOMC」に載せたグラフを参照されたい。

これから12月FOMCまで、イエレン議長はじめ、多くの地区連銀総裁の講演も控えるが、この差についての言及があるか否か、注目したい。少なくとも、12月FOMC後の記者会見では、質問が飛ぶだろう。

最後に、市場への影響だが、為替市場のドル高傾向が最も顕著。特に最も取引量が多く、ドル・インデックスへの影響度も高いドル・ユーロの通貨ペアでは、ユーロ売り・ドル買い両方同時進行の様相だ。ECB(欧州中央銀行)が、量的緩和とマイナス金利の合わせ技で緩和度を高めつつあるからだ。対して、ドル・円は、米12月利上げを前提にすれば、日銀追加緩和の切迫感がかなり薄まっているので、もっぱらヘッジファンドのドル買い攻勢の影響が強く出そうだ。ユーロ安よりは円安の進行速度は相対的に遅くなりそう。米雇用統計発表後のアルゴリズム取引による初期反応として123円台まで進行したが、次の11月雇用統計の出方次第などで、年末120~125円のレンジの中で収れんしてゆきそうだ。

株価は、6日のNY株価が、雇用統計発表直後に売られ、その後、買われた。良いニュースで、素直に買われるのか、或いは、緩和相場終了懸念が勝り売られるのか。まだ気迷い気分は残り、不透明感が完全に払しょくされていない。いっぽう、日本株は円安効果の上げが期待できる分、NY株よりは強気に見れる。

ヘッジファンドは、日本株に現在は「ニュートラル=中立的」。欧州株と日本株の両方に目配りしている。

そして、金価格は1100ドルを割り込み、プラチナは940ドル前後。利上げによる下げも、ここがピークかな。1080ドルまでは見ているが、円安で下げも相殺されている。長期的な底値圏。プラチナは来年の予測聞かれ、もう下値1000ドルって言っちゃった(笑)、 金の下値は1100ドルって、言っちゃった~~、もう外れてる。でも、気にならない。修正しましょうか、と聞かれても、いじらない。とにかく、2015年は下げの年。2016年は上げの年と見ているから。

さて、週末は宮崎でFP協会主催セミナー。午前中は、一般個人投資家相手に、FPフォーラムで2時間講演。午後は、FPの研修会で2時間半。2時間の予定が、計4時間も喋り続けると、勢いで止まらず30分予定より長くなった。

なんというか、私は独立してから、失うものもない気楽な身なので、言いたい放題。(除く放送禁止用語w)。活字では書けないこととか校閲で削られたことを、ぶっちゃけて語るので、皆、最後まで熱心に聞いてくれる。私の気持ちも、折角週末に時間割いて来てくれるのだから、ネットでいくらでも読める普通の情報ではなく、ここだから聞ける話をしたい。実は私のストレス発散にもなっていて(笑)、止まらなくなる。

FP鹿児島で聴講に来た宮崎支部長さんが、宮崎でも是非、ということになった次第。

今週末はFP青森。

横のつながりの口こみなのかね。

個人的に興味持ったのは、個人投資家とFPのセミナーでの反応の違い。個人は、すっかり打ち解けて、気楽に笑いながら聞いている。FPたちは、なんとなく、かしこまっている感じ。出席で単位ポイントが取れるからね。

セミナー終了後が、また面白かった。

2時間ほどランチタイムが入ったので、ちょっと散歩に出たら、道路上の車から大声で「豪ドルはどうですかぁ??」と叫び聞かれたり、配偶者がFXに走り、制止しても聞かず、どうしたらいいという相談とか。

旨い物では宮崎牛を堪能。そしてスイーツも。(FP宮崎支部の方々と)

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畜産が主要産業だから、会場の入り口に靴底を消毒するマットがあった。

本当はゴルフもしたかったけど、時間が許さず。次回は、プライベートでゴルフ宮崎ツアーだ!

2015年