豊島逸夫の手帖

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どちらが正しい、FRBか市場か

2015年1月29日

注目の1月FOMC声明の米経済分析には、「力強い=solid」という形容詞が新たに盛り込まれた。
急速に進むドル高・原油安によるインフレ率の下振れに関しては、
足元のエネルギー価格急落を認めた。しかし、堅調な雇用改善により長期的にはインフレ率も目標値にむかって上昇するとして、原油急落の物価への影響は一時的としている。原油安のマクロ経済への好効果により物価はいずれ上昇してゆくとの日銀と同じようなロジックである。
ドル高に関しての言及はなかったが、インターナショナルという単語が盛り込まれたことで、国際情勢にも配慮することが新たに記された。
そして、「忍耐強く」利上げの経済環境が熟するのを待つとの表現は変わらず。この形容詞の意味は、12月の記者会見で、今後2回のFOMCでは決定せず、とイエレン議長により直接明解に説明された。従って、次回の3月、次々回の4月FOMCには利上げなし、ということが確認された。最も早くて6月ということになる。
以上を総じて、今回のFOMC声明文から伝わる感触は、「6月の利上げに耐えられるほど米経済は回復している」との強気経済見通しだ。

しかし、市場の見立てはやや異なる。
モルガンスタンレーは27日に利上げは2016年3月に後ずれするとの公式見解を明らかにした。
市場の大勢は、依然6月頃であるが、モルガンスタンレーのような後ずれ説もジワリ増えつつある。
このように解釈が割れるときは、市場に聞け、と言われる。
そこで、米FFレート先物(シカゴ・マーカンタイル取引所=CME)の値を見ると、28日引け時点で、2015年6月ものは、0.165%をつけている。前回FOMCの12月時点では0.215%であった。つまり、6月時点での予想金利は下がっているのだ。CMEは「FRBウオッチ」という予測ツールも出しているが、それによると、FFレート先物値から割り出される6月利上げの可能性は12%にすぎない。
更に、米国10年債利回りは、FOMC声明文発表をはさみ、1.8%台から1.7%台へ低下した。インフレ期待が下落したことになる。
27日発表された12月米耐久財受注が、事前予測0.5%増に対して、マイナス3.4%と大幅悪化したことが、依然尾を引いているようだ。
月初に発表された12月雇用統計の平均時給も下落した。
失業率は5.6%まで下がったが、賃金上昇圧力が感じられない。理論上は、失業率が5.2%-5.5%にまで下がれば、賃金は上がり始めるはずであった。
なお、12月分の平均時給下落は、統計上の「外れ値」として例外扱いする見解もある。

そこで、30日に労働省が発表する米雇用コスト指数が注目されている。これは、四半期ごとに発表され、企業が負担する社会保険料などを含む総合的な雇用コストを示す指数なので、FRBも注目しているといわれる。
同じ30日には、10-12月の米GDP成長率も発表される。
この二つのデータの出方次第で、今回のFOMC声明文の市場の解釈も変わる可能性があるのだ。
中期的には、FRBと市場の間の予測のブレが、どちらかに収れんされることになる。どちらが正しいのか。民が正しければ、利上げ時期が後ずれすることになる。
その意味で、次回3月のFOMCの重要性が増してきた。
サクラの咲く頃には、ほぼケリが尽きそうな成り行きである。

さて、今朝の日経朝刊商品面に銀価格の記事が出ています。
そこで、私がコメントしているのは、金銀比価。
ベンチマークが1:60で、今は1:70だから銀に割安感がある、というコメントです。
活字にはなりませんでしたが、この1:60というベンチマークは過去10年間の金銀比価から割り出した数値で、NYMEXにゆくと、しきりに語られ材料視される数字です。銀に割安感があると活字になりましたが、一方で、金に割高感もある、と取材では語りました。
金が安くなるか、銀が高くなるか、どちらかで60にむかって収れんしてゆくとの見方です。
私は金に割高感がある、との見解ですが、これは活字にはならず。
まぁ、銀価格はプロ泣かせの難しい予測。需給より思惑で動くから、正直、銀価格予測はさほど自信がありません(笑)。 レンジと聞かれれば、12ドルから30ドルまで、なにがついても驚かない。それほど荒く変動するということです。だからアメリカ人投機家好み。日本でも銀マニアは多いから、セミナーでは必ず質問されますね。それから、2月2日の東証セミナー@京都については、東証、豊島逸夫、京都でググると出るよ。

そして、今日の写真は、初公開!ガーラ湯沢の私のシーズンロッカー。ここでスキーウエアに着替え、上がったら、スーツに着替えて、そしらぬ顔して(笑)、午後1時からの丸の内ミーティングに「出勤」するわけ。もう一つの写真のような銀白の世界に行くと、仕事のクリエイティブなアイディアも自然に出てくるもの。事務所のモニター画面に向かっているときより、頭の回転は絶対良いね!

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2015年