豊島逸夫の手帖

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年内続くか、日米欧中四極同時緩和

2015年5月15日

結果論だが、米小売り統計の低迷が、株の5月売り警戒感を鎮めた感がある。14日発表の米生産者物価指数低下とあいまって、FRB利上げ開始時期の後ずれ観測が加速しているからだ。

筆者が注目した利上げ予測サーベイは、米CNBCが51名のCFOを対象に実施した調査。利上げ開始時期を2016年と見る回答者が39%に達している。しかも、2016年4~6月期と同7~12月期が、それぞれ11%に達している。

中心値は2015年10~12月期の44%。同7~9月期は17%となっている。

企業の財務責任者の感触としては、企業業績を見るに、まだ利上げできる状況ではない、ということか。

なお、米株の大幅調整が今後3ヶ月間にありうるか、との設問には、60%が「ややあり得る」。22%が「ややあり得ない」と答えている。

総じて、「決められない」イエレンFRB議長が、ゼロ金利政策を年内引っ張る可能性が無視できなくなってきた。

そして、欧州。

こちらは、3月に開始された欧州中央銀行(ECB)による量的緩和効果で、早くも、マクロ指標に改善の効果が出始めた。そこで、気の早い市場参加者の間では、QEの量的緩和縮小説もささやかれ始め、欧州国債の利回り波乱が生じた。

しかし、14日に、ドラギECB総裁は、欧州版テーパリングの可能性を否定する発言をした。インフレ目標を達成するまでは、フルに量的緩和を稼働させるとの主旨である。

彼の発言で筆者が注目したのは、「ほぼ7年にわたる危機の連続で、企業も家計も、経済的リスクを取りたがらない。」との一節。

この事実は、米国にも当てはまる。原油急落による家計への臨時ボーナスが、消費に回らず、貯蓄されてしまっているからだ。米国経済分析局による個人貯蓄率は、原油急落が加速し始めた2014年11月には4.4%だったが、2015年3月には5.3%まで上昇しているのだ。その背景には、いまだに、住宅ローンがアンダーウォーター、つまり、住宅の資産価格がローン残高を下回る状態から脱却できずにいる家庭が多いことが挙げられる。住宅ローン金利が下がっても、融資基準の厳格化で、あのバーナンキ氏が、住宅ローン借り換えを断られたと話すほど。

かくして、個人の消費が盛り上がらなければ、経済成長率も低位の推移が続く。

従って、引き締めに踏み切るには未だ相当時間がかかる。

そして、中国。

サプライズ追加利下げに踏み切ったが、年内、まだ2回程度は利下げがありうるとの見方が根強い。銀行準備率引き下げという緩和手段も残す。更に、中国人民銀行は、巨額の債務を持つ地方自治体に地方債を発行させ、民間銀行は、それを担保に資金調達できる新たなルートも開いた。当局は否定するが、なにやら、中国版量的緩和を連想させる「非伝統的」手段だ。

経済の量から質を重視する新常態を目標として掲げるが、足元の経済成長が減速すれば、やはり、量の面も無視できない。

年初は、米国だけは、世界の緩和傾向に逆行して利上げに走ることが、2015年経済の最大前提とされた。まさか、利上げが2016年まで延期されることが、ひとつの可能性としてながらも論じられることなど、想定外であった。

外為市場では通年で見ればドル高との予測が揺らぎ、株式市場は、5月売りのトラウマから脱しつつある。(この点は、日経電子版14日付け「日本株下げも。。。5月売り、山越えの兆し」を参照されたい。)

但し、5月市場波乱の震源地ともいえる債券市場は、まだ余震が残りそうだ。その要因は、市場の流動性の限界にある。四極同時緩和から生じる巨額のマネーの受け皿となる市場が一部機能不全に陥っていることが指摘できよう。

そして、金も、緩和継続の波にのり1225ドルまで上昇。

ドル円が膠着しているので、円建てでもストレートに上がった。

但し、空売り(ショート)の買戻しなので、これに続き、新規買いが入る可能性は低い。1170ドルでは強気だったが、1220ドルでは弱気。

昨日、ブログに採録した金原稿が、昨日の日経に掲載されたので、色々反応があった。「これまで金というと、投機と見て、敬遠していた。金は儲けるのではなく貯めるもの、という言葉が響いた。」というコメントが代表的。1208ドルが生産コストと書いたが、丁度、昨日は1190ドルから1220ドルまで急騰したので、タイミング良かった。

そして、昨日は、久しぶりに六本木ミッドタウンで打ち合わせ。

写真は、クレソンのスープ。抹茶添え。

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そして、虎屋で、菖蒲饅頭と新茶。

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久しぶりだったので、店内のスタッフが変わり、特別待遇受けられず(笑)。 最近、他の隠れ家に浮気してたからな~。しょうっがないか(笑)。

それから、事務所副代表治部れんげが、7月26日国際女性会議で講演します。

「女性の投資が日本経済を動かす」というテーマ。

詳細は、当事務所の公式HP 

www.toshimajibu.org

私の講演予定も随時、更新してます。

2015年