2015年6月24日
案の上、と言おうか、チプラス首相が債権団に提示して好感された新改革案が、さっそくアテネでは、政権内そして一般市民の猛烈な抵抗に遭っているようだ。
新改革案の内容については、23日付け本欄「ギリシャ、デフォルト回避の代償」に詳述してあるので、参照されたい。
「政局不安、総選挙、国民投票」などが予想されることも書いたが、早くも、その可能性が顕在化しているとアテネで知りあった現地のエコノミストたちは見ている。
その理由は、ドイツが新改革案に関して、6月29日(来週月曜日)までにギリシャ議会の承認を得るように要求しているためだ。これまでも、チプラス首相が債権団との協議では合意していたはずの事項が、帰国後、猛反対に遭い、頓挫した例があるので、不信感がぬぐえないのだ。
しかし、この数日で政治的に根回しして、果たして議会の承認を得られるものか、甚だ疑問が残る。もし、政権が極度に不安定化すれば、チプラス首相辞任の可能性も現実的となろう。
しかも、翌30日がIMF融資返済期限そしてギリシャ救済延長期限の最終日である。事実上、IMFへの返済は、特例措置でも講じないと無理との見方もある。更に、7月20日に償還を迎える35億ユーロのギリシャ国債(ECB保有)についても、資金繰りの目途がたたなくなる。
いっぽう、ギリシャ国会前のシンタグマ広場では、ユーロ離脱反対派と、緊縮絶対反対派の市民たちが、にらみあっているという。
「55歳から年金受給できる制度は、気前良すぎるのでは?」との質問に「特に女性は体力的に重労働を強いられてきているのだから、当然報われるべき。」との答えを聞くと、年金支給開始年齢を67歳に引き上げる新提案が、市民感覚では到底受け入れがたいことが想像される。
このギリシャ問題を色々な人たちと論じつつ、筆者が感じることは、現地の空気を吸ってきた人たちが殆ど悲観的という事実。
どうみても返済できるはずがない規模に膨らんだ借金の山は、債務削減(ヘアーカット)なくして解決の目途はたたない。その債務削減分を事実上負担することになるドイツ納税者たちの理解も得られまい。
ドイツ側も「これ以上の救済資金投入は、新改革案が実施されねば、できかねるが、ギリシャのユーロ離脱は避けたい。」との立場にある。
当面は、IMF返済期限延長或いは特例の臨時短期資金供給措置で時間稼ぎする案が、依然現実的に見える。
金も株も債券も外為も、まだ、「ギリシャの呪縛」から抜け切れない。