豊島逸夫の手帖

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人民元切り下げで金プラチナ急騰

2015年8月13日

3日続けての人民元切り下げ。

中国人民銀行は、どこまで人民元の基準値を下げるのか。

切り下げの落としどころは10%前後なのか。マーケットには様々な憶測が飛び交う。

暗中模索の市場には不透明感が強まり、漠とした「チャイナ・リスク」が金価格を押し上げている。

中国人民銀行の方針は、人民元自由化のプロセスを、急激な変化ではなく、緩やかなペースで進める政策とも読める。

しかし、手のうちを明かさず、連日、恣意的に「基準値」を決めてゆく手法を続けると、市場は疑心暗鬼に陥ってしまう。中国政府が目指す「安定的な国際通貨」としてのステータスなど望むべくもなかろう。

いっぽう、この不透明性は、投機的売買により荒らされるリスクをはらむ。

今回の人民元安誘導が、国際競争力強化・輸出下支えにあるならば、投機家には、とにかく人民元をショート(売り)して、様子を見るとのインセンティブが働く。その結果、市場内には、投機的な人民元売りポジションが蓄積して、潜在的かく乱要因となろう。それが臨界点に達するとき、一斉に投機的人民元買戻しが生じて、人民銀行は大規模な人民元売り・ドル買い介入を強いられるからだ。

なお、日本サイドから見ると、マイナス成長が予想される4~6月期の日本実質国内総生産(GDP)速報値発表を来週17日に控える前週に、サプライズ人民元切り下げが起きた。

日本の市場には、マイナス成長となれば、政策調整=追加緩和に踏み切るか、との憶測が流れている。そこに、中国不安・株急落リスクが加わると、追加緩和機運が更に高まる可能性もあろう。

なお、今日の日経朝刊マーケット面に「無国籍通貨、金、人民元下落で急騰」の記事が載ってます。

2015年