2015年2月20日
日経平均が15年ぶりの高値をつけるなか、海外ではマネーが欧州株に向かっている。
グローバルなおカネの流れを見ると、「米国独り勝ち」によりマネー米国一極集中傾向が顕著だ。その背景には、もちろん、米国量的緩和終了がある。
しかし、足元では、極端なマネー偏在に対する警戒感が高まりつつあり、米国から見た「国際分散投資」が新たなテーマとなっている。
その運用先多様化のターゲットとして、まずは欧州株。次に日本株、あるいは一部見直し気運も出てきた新興国株が挙げられる。
なぜ、日本株より欧州株なのか?
理由は明快だ。
欧州には、欧州中央銀行(ECB)はいよいよ量的緩和開始、との期待感が底流にある。対して、日銀は追加緩和の切り札温存の構えだ。となると、主要国が「緩和競争」に走るなか、日銀は「緩和負け」との印象がつきまとう。
しかも、18日発表されたFOMC議事要旨では、米国も実質的には緩和状態が維持される可能性が強いことが確認された。量的緩和は終了したものの、引き締めへの転換には時間がかかりそうだ。
客観的に見れば、黒田日銀総裁は、「必要があればちゅうちょなく調整する。」と追加緩和が選択肢にあることに言及しているのだが、欧米市場では「日銀金融政策決定会合にサプライズはなかった。」との受け止め方が大勢だ。
更に第三の矢(サード・アロー)も欧米市場では用語としてすっかり定着したものの、その結果が見えない。日本にいれば、その進捗状況が遅々としたペースながらも検証できるのだが、海外には伝わっていない。筆者がヘッジファンドや米国年金基金の後輩たちから最も頻繁に聞かれる単語がデリバー(deliver)。アベノミクスは結果を出しているのか、ということだ。
ひとつでもいい。分かりやすいデリバーがあれば、マネーは動く。
欧州株だって、ギリシャ・ウクライナ不安をかかえ、決して安心して長期保有できる市場環境ではない。とりあえずマネーをパーキングさせている感覚だ。
したがって、二位欧州株と三位日本株の差は決して大きくない。
海外マネーも、運用計画書に日本株を入れ込むための材料を探しているのだ。実際にNYのヘッジファンドに招待されアベノミクスついて講演してきたとき、彼らの目的が「ネタ探し」にあることを実感した。
年初には、「ECB量的緩和発表の1月は欧州株、ギリシャ問題が決着する2月は日本株。」と語るファンドもあった。そこで、本欄1月23日付け「市場の視線、欧州の次は日本」のなかで「ユーロ売りも欧州国債・株式買いもいつかは臨界点に達する。運用のテーマが、欧州から日本へ移る可能性があることを指摘しておきたい。」と書いた。
そして日経平均が新高値更新の翌日の今日、ブリュッセルのユーロ圏財務相会合でギリシャ金融支援についての最終決定が下される。
ウォール街の後輩たちのなかでは「かりにギリシャ・ユーロ離脱で株価が下がれば、そこが買い時。」という声が強い。金融安全網により南欧諸国への伝染は防げる。心理的動揺で売られれば、長期的には買い場との読みだ。
いっぽう、ギリシャよりウクライナのほうが欧州にとっては重要なので、当面はギリシャには妥協して先送りとの見方もある。ロシア南下政策の最前線は現在ウクライナにあり、バルカン半島はその次、というわけだ。ドイツ国内でも、ウクライナを重視するメルケル首相と、ギリシャ許すまじ、とばかりに厳しい語調のショイブレ財務相の間には微妙な温度差があるのだ。
そのなかで、市場の視点で見れば、ギリシャ問題は先送りにせよ決裂にせよ、材料として陳腐化してゆく。
ECB量的緩和もマイナス金利がここまで拡散してくると、市場の「期待感」が債券市場発の「不安感」に変質する可能性を秘める。
そこで「市場の視線、欧州の次は日本」に誘導するためには、アベノミクスの「マーケティング活動」強化が必要と感じる。
さて、国内金価格が高値圏にあるので、日本の金市場は活況との記事が、一昨日日経朝刊M&I面と、今朝の日経朝刊商品面に出ています。買う人あり、売る人あり。さまざまですが、国際金価格が下がっても、円安効果で国内では上げやすく下げにくい状況はまだ続くでしょうね。
セミナーでも、相変わらず、今買ってよいか、売った方がよいか、と聞かれます。みなさん、質問の仕方が下手!短期投資なのか、長期投資なのか、資産規模はどのくらいなのか、家族構成はどうなのか。その人によって、答えは違ってきます。それを、ただ、買いですか、売りですか、では、あまりに漠としすぎ。かといって、個人相談をセミナー質問でやるわけにもゆかないしね。少なくとも、長期と短期には分けて話していますけれど。長期投資といっても、短期の価格動向が気になることも事実。これが人間の欲というもの。
悟りなんて開けないよ(笑)。