2015年1月23日
本格量的緩和を遂に決定したECB理事会後の記者会見でのドラギ氏の語り口は、市場に残るスイスショックを払拭した。中銀への不信感から疑心暗鬼に陥っていたマーケットには、再び、「中銀には逆らうな」との合言葉が飛び交う。
ヘッジファンドがユーロ・キャリーで南欧国債や金を買う動きが早くも顕在化している。先安感が強い超低金利通貨ユーロを調達通貨として、リスク資産を貪欲に買い漁る。欧米年金のヘッジファンド外しに危機感を強めるヘッジファンドにとって2015年は生き残りをかけた正念場だ。
更に、世界の外為市場で最も取引量が多く流動性が豊富なドル・ユーロの通貨ペアに、大規模なユーロ売り攻勢をかけている。中期的にはドル・ユーロのパリティー(1ドル=1ユーロ)まで視野に入る。
いっぽう、債券市場では、南欧国債の取引量が急増している。
20日には、スペイン10年債が1.66%という異常な低利回りで一日に約3兆円相当も買われ市場の話題になった。買い手は勿論ヘッジファンドと見られている。
但し、さすがにギリシャ国債買いには腰がひけている。今回のECB理事会声明文では「購入対象を投資適格債に限定」としながらも、記者会見では「救済条件を守れば、今後年央に償還される分については購入の可能性を否定せず」との含みを残した扱いになっているからだ。要は、ギリシャ国債も購入対象に入れるか否か、どちらにも解釈できる言い回しなので、手が出しにくい。
25日のギリシャ総選挙は、与党野党どちらが勝っても、ギリシャ不安は払拭されない。借金というものは、身の丈をはるかに上回る規模に積み上がると、結局、「借りた者勝ち」なのだ。困るのは貸した側ということになる。
メルケル首相も政治都市ベルリンでは、構造改革への圧力を弱めるような量的緩和に懐疑的なスタンスを崩さない。しかし、ECBが本拠を構える経済都市フランクフルトでは、ギリシャへの強硬な姿勢を維持しつつ、「ユーロ離脱は歓迎せず」とも語る、あるいは、語らざるを得ない。ユーロの恩恵を最も強く感じているのはフランクフルトなのだ。
ぎりぎりの綱渡り外交は続き、ギリシャ懸念はくすぶり続ける。
さて、ヘッジファンドに話は戻るが、ユーロ売りも欧州国債・株式買いもいつかは臨界点に達する。
そこで、問題は次の標的だ。
次の運用メニューの中で、日本株買い・円売りのジャパン・トレードへの期待感は強い。2014年、SP500指数をもアンダーパフォームする醜態を演じたヘッジファンドにとって、ジャパン・トレードは数少ない稼ぎ頭の一つであった。
そこで、運用のメインテーマが、欧州から日本へ移る可能性があることを指摘しておきたい。
俯瞰すれば、今年1-6月は、日米欧中、同時緩和状態という地合いになりそうだ。いわゆるリスクオンである。
米国もまだ緩和から引き締めに転換したわけではない。
中国でも利下げ、資金供給オペなど緩和バイアスが強まっている。
このような市場環境では、リスク資産の循環物色が続くことになろう。
金融正常化のプロセスでは、市場のボラティリティーも高まり、短期投機筋にとっては、値幅取りの売買機会は増える。
今年最大の運用テーマである米利上げについて、開始時期観測にブレが生じつつある今、中長期のポジションは取りにくい。
ユーロ売りも欧州株買いも賞味期限は短い。
日本株・円の鮮度が相対的に高まる日も近いと感じている。
金・プラチナもキャリトレードの購入対象にされやすい地合いだ。
ドル高・株高にもかかわらず金も買われている、しかも、金プラチナ価格逆転という異常事態である。市場の法則が崩れているところにマーケットの当惑を感じる。
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