豊島逸夫の手帖

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イタリアは大丈夫か

2018年9月6日

イタリア国債の利回りが乱高下して債券市場発の波乱要因になっている。

事の発端は今年の選挙で誕生した極右と極左政党の連立政権。この連立政権が準備した予算案が「ばら撒き」で、EUの財政赤字目標=GDP3%以内というルールに抵触する可能性が顕在化した。マーケットも放漫財政を嫌い、イタリア国債を売り、安全資産とされるドイツ国債に乗り換えた。イタリア国債の利回りは上昇、安全資産のドイツ国債は利回り低下。その結果市場が注目するドイツ国債とイタリア国債の利回り格差が、欧州金融危機の頃の3%近くまで急上昇したのだ。イタリア国債の方がリスキーなのだから、安全資産のドイツ国債に比し、相当の高い利回りを貰わなければ割に合わない。これをリスク・プレミアムという。

最新の状況は連合政権がEUとの対決姿勢を和らげ、妥協の姿勢を見せたので、債券市場にも安堵感が漂い始めたところだ。だがイタリアのことゆえ、いつ、どんな「ちゃぶ台返し」があるか、市場は神経質にならざるを得ない。

更にジェノアでの橋崩落の大惨事があり、老朽化したインフラ工事に予算を廻さねばならない。事故の責任は放置した政府にありと国民の非難も激しい。しかしもはや、降って湧いたような大型インフラ工事に予算を廻す余裕はない。事は政治問題化しつつある。

2018年