豊島逸夫の手帖

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トランプ対中国追加関税、市場荒れ模様

2018年7月12日


昨日第一報を書いたトランプ大統領の対中国追加関税案が世界の市場に影響を与えている。
まず外為市場ではドル高進行。米中貿易戦争は長期化必至の様相。消耗戦だ。となると現時点で絶好調に近い米国経済に余力あり有利か!との判断でドルが買われた。


同日発表された米国生産者物価上昇率がコアで0.3%増と事前予想を上回ったこともドル買いを刺激。トルコ・リラが対ドルで急落したことも一因。エルドアン大統領、なんと娘婿を財務大臣に任命。通貨安というのに「利下げする」と宣言。独断独裁ぶりに市場はトルコ・リラ売りで抗戦した。更に人民元安観測も依然根強い。冷静に考えれば、中国人民銀行が人民元安に誘導すれば中国からのマネー流出が加速するからおいそれとは出来ないのだが。
その結果ドル高で円安となり112円台に。NY市場では安全通貨はドルとの発想。東京市場では円が安全通貨とされるので温度差あり。
こうなると日本株は円安歓迎で買われる。日経平均255円高、一方NY株は219ドル安。米中貿易戦争激化を嫌気。


そしてドル建て価格で取引される原油・金などのコモディティーはドル高で売られる。

原油はリビア生産再開(日量80万バレル)も手伝い3%急落。WTI原油先物は70ドル台。

金も売られ1240ドル台。円建て金価格は円安で下がりにくい。本欄想定内の動き。

債券市場では注目の長短金利差が更に縮小。イールドカーブのフラット化進行。現在米国経済は好調だがトレンドは米国経済減速を見込む現象だ。

なお、肝心のトランプ追加関税だが、今回は消費者に直結する商品が対象なので米国民が値上げという痛みを感じること必至。


一方、中国側は大人の対応。「騒ぐな、大事ない!」と言わんばかり。「新聞一面扱いするな。」などお達しが出ている模様。関税対象の大豆、半導体、自動車など、もはや米国製品無しでは立ち行かない。文化面を含め米国の影響に染まりつつある中国国内事情。日本製品や韓国製品をいじめた結果、日本、韓国企業が中国から逃げてしまったという苦い経験もある。北朝鮮問題と貿易戦争はディールしない(別扱いで取引対象にはしない)との交渉姿勢だ。この際、自分たちこそ自由貿易を守る「白馬の騎士」という役割を演じようとしている。欧州や日本を懐柔して味方に付けようというハラが透ける。


まだ追加関税「案」の段階で、パブコメ(パブリック・コメントを募る期間)を経て2か月後の決定となるので紆余曲折はありそう。中間選挙までトランプ大統領も譲る気配は感じられないが。要経過観察。


なお、7月16日午後日経本社セミナーで講演するよ。↓


https://www.nikkei4946.com/seminar/seminar.aspx?ID=2412

2018年