豊島逸夫の手帖

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日銀に屈したヘッジファンド

2018年8月1日

日本の国債市場が機能不全に陥り、NYのヘッジファンドは代替市場として米国債市場で日銀金融政策に関する思惑売買を繰り広げていた。「日銀の出口近し」との判断で、米10年債の記録的空売りポジションを積み上げていたのだ。その規模はCFTC(米国商品先物委員会)が毎週末発表する先物売買データで検証できる。7月24日発表のデータでは、ロング(買い持ち)543,916件、ショート(売り持ち)1,035,680件、ネットで509,498件とされる。(1件10万ドル単位)。

その結果、日本10年債利回りが0.1%を突破した時点では、米10年債利回りが2.99%と3%寸前まで急騰する局面もあった。

その当時の場況を読み返すと「ウォール街は日銀金融政策決定待ちで、米10年債利回りはこの1か月で最高水準の2.99%を付け3%台に迫っている。」などと書かれている。

しかし日銀会合での結果がヘッジファンドの苦々しげな言い回しを引用すれば「長期金利をいじるだけの微調整」に終わり、目論みは外れた。

米10年債利回りも、NY時間30日終了時点の2.98%近傍からほぼ垂直に31日開始時点の2.95%台にまで急落している。ヘッジファンドの当惑ぶりが窺える。31日は結局2.96%台で引けた。

そもそもヘッジファンドには日本国債の空売りを仕掛け失敗を繰り返した苦い経験がある。日本国債トレードはウィドウ・メーカー(寡婦製造トレード)などと呼ばれたものだ。「もう日本国債にはこりごり。」今回大損したヘッジファンドはぼやく。

教訓として「日銀には逆らうな」が合言葉になりそうだ。

一方、NY株式市場では長期金利変動幅が拡大しても日銀緩和継続歓迎姿勢だ。

パウエルFRB議長はタカ派的との見方も根強く、パウエル・プットは望めそうにない。FRBの量的緩和(QE)から量的引き締め(QT)への転換は意図せざる経済ショックの可能性を孕む。そこでFRBが市場から引き揚げる流動性を日銀が補ってくれるとの期待感が漂う。ミスタークロダのおかげで流動性相場も持続できそうとの期待が感じられる。

黒田総裁が記者会見で2019年10月消費増税をリスク要因の具体例として挙げたので、日銀緩和は2020年まで続くかとの質問もあった。

FRBとECBが量的緩和終了・縮小に動く中で、改めて日本が過剰流動性の輸出国になっていることを実感した。

なお外為市場では円独歩安である。ドル・ユーロは大きく動かず対円でのドル高が突出している。今回ばかりはほぼ同時開催のFOMCは影が薄く、日銀効果でドル高・円安が進行中だ。

円安で円建て金価格はさすがに反発。

2018年