豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. インフレは期待か懸念か、市場の分水嶺
Page2482

インフレは期待か懸念か、市場の分水嶺

2018年2月5日

ダウ平均が先週金曜に急落。下げ幅655ドルは2008年以来とされる。

キッカケは雇用統計で平均時給が年率3%上昇に接近したことだった。これは良いニュースだ。しかし、株は売られた。賃金が上がれば伸び悩んでいたインフレ率も上昇が見込め、利上げの回数も増えるので金利上昇加速は株価に逆風という解釈だ。

市場で「良いニュースは悪いニュース」と言われる事例の一つだろう。

折から米長期金利が2.8%を突破して、今年のメイン・テーマである金融正常化による金利上昇が強く意識され株価が頭打ち傾向だった。それゆえ、平均時給上昇のインパクトも強かった。

奇しくも、2日金曜日はイエレン氏、FRB議長として最後の日。月曜にはパウエル氏が新FRB議長として就任というタイミングであった。イエレン体制最後のFOMC声明文で「今年はインフレ率が上昇」との文言が盛り込まれた直後でもあった。

一方、原油価格は金曜日に急落した。これはインフレ期待を弱め利上げを抑制する材料でもあるが、米国株式市場では通常通り売り材料とされた。

今回は「良いニュース」を素直に受け止められず「悪いニュース」にされたが「良いニュース」は「良いニュース」として市場が反応する場合もある。

米国経済が利上げ回数増加にも耐えられるほど好調であると考えれば、中期的には米国株式にとっても歓迎すべきことであろう。

なお、インフレについては「インフレ期待」と「インフレ懸念」を弁別する必要があろう。

賃金上昇によりインフレ期待が高まる限りにおいては「良いインフレ」と言える。但し、完全雇用の経済に大型減税と大型インフラの財政刺激が注入され外部環境として原油価格続騰となれば、過熱が意識されインフレ期待がインフレ懸念に変わる。その結果、FRBも想定以上の引き締めを迫られるとなれば、市場の警戒感も本格的に強まろう。

「期待」か「懸念」か。

示唆的なのは、インフレヘッジとされる金の価格が雇用統計発表後、1345ドルから1330ドル台を一時割り込むほど急落したこと。金利を生まない金はインフレ期待が高まることによる利上げを警戒しているが、ヘッジとして金が買われるほどインフレ懸念が高まるとは判断していない。

さて、その金曜夜は結局NY相場急変で貫徹でした。そのままABC朝日放送朝9時半からの生番組「正義のミカタ」に生出演90分。さすがに帰りの新幹線は爆睡。

なお、ツイッター@jefftoshimaで金曜夜は12回ツイートしているので、時系列で追うと何が起こったのか分かるよ。

2018年