豊島逸夫の手帖

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米欧通商合意、ゼロ関税の本気度

2018年7月26日

NY市場が引けた直後、ホワイトハウスからトランプ大統領とユンケル欧州委員長との共同記者会見の映像が流れた。引け前から「米欧通商合意近し」との観測が材料視され、ダウ平均も172ドル急上昇していた。

記者会見では、トランプ大統領が米欧通商交渉の目標として「ゼロ関税、非関税障壁ゼロ、補助金ゼロ」を強調、連呼した。

しかし対象は本丸の自動車を除く産業製品だ。

米欧貿易戦争エスカレートという最悪のシナリオは暫時回避されたが市場にはモヤモヤ感が残る。

米欧両サイドの見解の差は容易に埋まらない。

トランプ大統領は米国CNBCとのインタビューで「ユーロを見よ。EU側は通貨安政策を採り、米国は不利な立場にある。」と非難。「米国はEUとの間でこれまでに1500億ドル損をしている。EUはたやすく儲けて彼らの通貨は安くなっている。」と主張している。対して1500億ドルの損失というのはモノの貿易赤字。米国経済の好調な需要を映す数字というのが欧州側の言い分だ。

そもそも米欧間ではTTIP(大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定)がまとまらず棚上げになっている。総論賛成でも各論となると米欧ともに譲らないからだ。米国政権が保護主義路線を強める今、今回のトップ会談で事態が大きく進展すると考えるほど楽天的にはなれない。

「交渉継続中に関税を引き上げることはない。」とのユンケル発言が今回の進展と言えようか。

市場は米欧通商交渉の真の合意に向けての本気度を探っている。

2018年