豊島逸夫の手帖

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米中貿易戦争でも株高、なぜ?

2018年9月19日

対中2千億ドル追加関税発動なのに、なぜ株が買われるのか?NY市場でも喧々諤々の議論が交わされている。

「悪材料出尽くし」というのは、いかにも株のセールストークに聞こえる。今後更にトランプ大統領が中国からの全輸入に対して25%関税発動のシナリオには現実味がある。「リスクオン」との掛け声も勇ましいが現場では高揚感に欠ける。

「中国側の対抗手段には限界があるので米国有利の展開。新興国経済不安でマネーが米国に逆流中。」で米国株は上昇するだろうが、上海株はもっと下落するはず。

「早晩米中は折り合う。共倒れのリスクは回避される。」との楽観論も、先週金曜日のNY市場前場までは株価を支えていた。しかしトランプ大統領はムニューチン財務長官の対話路線より、ライトハイザー通商代表部代表の強硬論を選択。その後NY株価は一転急落した。

その時点で株先物売りに走った投機筋が「噂で売ってニュースで買い戻した。」との指摘もある。現場の感覚ではありそうな話だが、それだけなら昨晩のNY市場はもっと乱高下したはず。実際には引けまで概ね上昇基調が続いた。VIXも12台で安定している。

債券市場も昨日は楽観的だった。米10年債利回りが再び3%の大台を突破。安全資産の米国債が買われるどころか逆に売られたのだ。米国経済のインフレ期待上昇を映す現象と解釈される。「株式市場は楽観論で育ち、債券市場は悲観論で育つ。」と言われるが、その債券市場でさえ警戒感が薄い。

市場が米中貿易戦争エスカレートではなく、暫時ディエスカレート(沈静化)と読んだという見方は考えられるシナリオか。

関税率25%を覚悟していたものの年内は10%に抑えたことが、現実的妥協模索の姿勢と理解された。年末までまだ3か月ある。1四半期あれば十分に売買回転をこなす時間的余裕がある。この「執行猶予期間中」にヘッジファンドが一勝負かけたというわけだ。

いずれにせよ市場内でトランプ大統領の次の一手を正確に読める人はいない。昨日のトランプ発言も「対中交渉にはオープン。」と語ったかと思えば、ポーランド大統領との共同記者会見で「中国からも、そして失礼ながら貴国が属するEUも含め米国はリップオフ(ぼったくり)されっぱなしだ。」と言ってのけた。

トランプ大統領の本音を測りかねた米年金基金などの良質の投資マネーは足元で模様眺めを決め込んでいる。

市場が米中貿易戦争に本当に警戒感を示すシナリオとしては、中国保有の米国債売却やなりふり構わぬ人民元安誘導が語られるが、これは非現実的。副作用が中国経済に跳ね返るのは必至だからだ。

筆者は金利を市場へ持続的影響を与える変数として重視するので、FOMCの利上げ判断を揺らす事態になるか否かに注目している。

さて昨日から復活した旨いもの写真。山梨直送の葡萄。ピオーネ、ゴルビー、シャインマスカット。今年は猛暑で葡萄の糖度も高い。ワインは当たり年だね。そして千疋屋のシャインマスカット・パフェ。暑い日にはたまらないデザート(笑)。 そして千疋屋の天然ジュースセット(いただきもの)。

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2018年