豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 米株制御不能、不気味な円高進行、金急騰
Page2694

米株制御不能、不気味な円高進行、金急騰

2018年12月18日

「NY株は下がる。絶対的確信あり。転換点は現在22のVIXが40まで急騰する時。」

カリスマ投資家グンドラック氏が日本時間深夜12時頃テレビ出演で語った。ダウ平均は10ドル高だったのが、インタビューが終わってみれば200ドル近く急落していた。これをキッカケにプログラム売買に売りの連鎖が発生。特に大きなイベントがあったわけでもない。「わけもなく下がる」これも最近の特徴だ。

世界景気後退局面で利上げに踏み切るFRBへの不信感が底流と言えようか。

利上げ反対の声も合唱コーラスとなり、波状的にパウエル氏に圧力をかける。

トランプ大統領は「インフレはなく、ドルは強く、世界ではパリが燃え中国が下落中というのに、FEDは利上げに動く。」と述べ、ナバロ氏も「トランプ大統領の勘は正しい。」と援護口撃。

グンドラック氏は、かねてから「FRBはsuicide mission=特攻隊。」と批判していた。更に17日のウォールストリートジャーナル紙にドラッケンミラー氏とウォーシュ氏が共同寄稿。FRBは利下げと資産圧縮プログラムの二面作戦を止めよと長文記事で説いた。ドラッケンミラー氏はソロス氏の資産運用を担当した人物。ウォーシュ氏は元FRB理事である。

これまで12月利上げは市場に織り込まれていたが、果たして利上げ決定されるか、危ぶまれることも絵空事ではないような地合いになってきた。

更に原油価格がWTIで50ドルを割り込んだ。昨日懸念されたことは原油安がクレジットリスクとなる可能性だ。米国ハイイールド債は約半分がエネルギー関係。シェールは50ドルを割り込むと生産コストギリギリとなる。ハイイールド債市場は今回の金融混乱の中で不安視されてきた。新規起債は直近ゼロに近い。

民間とFRBの間に利上げ予測を巡り大きな差が見られることも不安要因だ。

9月FRB経済展望のドット・チャートでは、FOMCメンバーの19年利上げ回数予測が12月利上げ実行を前提に2回以下3名、3回4名、4回4名、5回4名、6回4名、7回1名であった。

一方、民間市場の利上げ確率は昨日本欄で詳述したが、1回とゼロ回が3割以上の確率で2回と3回は非常に低い。3回などはほぼゼロに近い。

これほどの官民見通し格差は見たことがない。

今週発表のFRB経済統計のドット・チャートで修正されるであろうが、民間から見ればこれほど経済の見方に差があることが大きなリスクだ。「FRBが間違っているリスク」が今の最大のリスクかもしれない。

FOMC後の定例記者会見では、当然この認識ギャップが問われよう。

パウエル議長の答え方次第でバーナンキショックの如き混乱を生じる可能性も否定できない状態だ。

日本も巻き込まれよう。

既に円相場で波乱。112.80円台まで円高が進行した。織り込まれた12月利上げがひっくり返ると、一気にドル買いポジションが巻き戻されよう。新規のドル売り円買いポジションも醸成されよう。

年末相場が危うい。

さすがにこのように不安定な市場ゆえ、金は買われ1240ドル台へ急伸。

2963a.gif

そして今日の写真は、「マル」@らく山。すっぽん鍋。ふつふつと熱く煮えて。冬には暖まるし、コラーゲンも豊富だし、力もつくし。たまらんね~~。

2964b.jpg

 

2018年