豊島逸夫の手帖

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米朝合意文書署名、冷ややかな市場

2018年6月13日

命(体制)とカネを必死に求める金正恩委員長。中間選挙しか頭にないトランプ大統領。この2人がシンガポールで会い握手のセレモニー。双方のメンツを立て、称賛し合い「合意文書」に署名。米朝雪解けをアピール。しかし完全非核化のプロセスについて具体的言及はなし。

この程度の話では市場は納得しない。

昨日は午後5時からトランプ大統領の記者会見が始まって、延々1時間10分トランプ節に付き合った。終わったら6時半近くだった。ブログ当日に間に合わず。

総じて金正恩委員長の方がトランプ大統領に判定勝ちの印象。

トランプ大統領は「歴史的!これまでの大統領では成し得なかった!」を連呼。

あの人権無視、残忍な行為を容認してきた金正恩委員長を「若いのに良くやってきた。才能がある。特別な人だ。」と持ち上げる。同盟国首脳をこき下ろすのと対照的。

「米韓共同軍事演習凍結」と語った時には驚いた。その見返りも特定できないままの大きな譲歩。これは北朝鮮側にしてみれば思わぬ得点。

そして気になったのはトランプ大統領が二言目にはカネの話を持ち出すこと。駐韓米軍は引き上げるかとの記者からの質問に「カネがかかる。グアムから戦闘機を飛ばすだけで巨額の費用が発生する。だから撤退したい。しかし現実にはそうもいかない。」

「米韓軍事演習は中止。これもカネがかかる。」

「対北朝鮮に必要なカネは日韓が気前よく出してくれることになっているのだよ。米国は既に他の面で充分にカネは出している。」

結局日本はカネを払って拉致問題を提起してもらったということ?これもディール?

拉致問題に関しては合意文書に盛り込まれず。記者から聞かれて提起したとの答え。あまり意識していなかったことはミエミエ。それに比べ朝鮮戦没者遺骨回収の事は合意文書にも明記され記者会見でも長々と熱く語った。拉致問題との対応の差が鮮明だ。

半島情勢に詳しい元米副国務長官がこう述べていた。「日本に向けた短距離ミサイル問題はどうなった。何も進展なし。日本の拉致問題はどうなった。解決の道が分からない。」

モヤモヤ感が残る米朝会談の一日だった。

2018年