豊島逸夫の手帖

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大荒れ相場の一部始終

2018年12月7日

昨日書いたファーウェイCFO逮捕の事件後、日経平均は500円超下げる展開となりファーウェイショックとなった。

何せファーウェイ社は中国最大級の企業で、年間に市場で買われるスマホの数は5億を超す。米国の(そして同盟国の)懸念は、これが中国のスパイ活動やサイバー攻撃に利用される可能性があること。ファーウェイ社CEOは元人民解放軍出身なのだ。そして今回逮捕されたCFOがCEOの娘。一人民解放軍兵士の家庭に生まれ父親の会社に出入りするようになり、今や実質NO2の座にまで登りつめ次期CEO候補だ。例えれば中国政府がアップル創業者の娘を逮捕したようなもの。衝撃は大きい。

日本ではソフトバンク回線不通の事故が大きく報道されたが、欧米はファーウェイショックで世界同時株安の報道が圧倒的。

アジア・欧州市場軒並み株急落。そしてNY株式市場は午前中下げ幅を700ドル超まで急拡大したが、午後になり一転下げ幅縮小モードに転換。終わってみれば一桁違う前日比78ドル安で引けた。

NY金もNY時間に入り動意づき1235ドルから1244ドルまで急騰。その後反落したが最近のレンジでは高値圏で推移した。これだけ市場に不安感が高じると、やはり金は買われる。

では、昨晩のNY市場乱高下では何が起こったのか。

午前中はファーウェイショック、OPEC減産合意難航、逆イールドを嫌気してアルゴリズム取引中心に株の売り注文が連鎖的に殺到した。しかし、株価の異常な下落がFRB利上げ観測後退を予測させる結果になった。OPEC減産合意難航、原油安懸念も物価を引き下げ利上げを遅らせる要因と化した。

一方、カプラン・ダラス連銀総裁が米国CNBCに生出演。来年前半の米国経済の景色は今年と異なると警鐘を鳴らし「ゲームでカードを開いても、動かず我慢強く待つべき時もある。」と語った。更にボスティック・アトランタ連銀総裁が「中立金利は叫べば届く距離にある。」と発言。パウエル総裁の「中立金利近し。」発言に合わせたかの如き表現ゆえ、市場内ではFOMC参加者たちの利上げ慎重論「合唱コーラス」のような効果があった。同時進行的にウォールストリートジャーナル紙がパウエルFRB議長の「金融政策とは暗闇の部屋を手探りで歩く如し。」との講演発言を引用。フォワード・ガイダンスにより市場に利上げ方針を明示するのではなく「成り行きを見守るwait and see」の姿勢と報道した。これまでの3か月に一度利上げという決まったペースではなく、データ次第であくまで臨機応変に対処する。来年の利上げペースは白紙状態なのだ。市場内には、今月12月利上げも一か月遅らせて「来年1月に延期」説さえ流れる。これまではFOMC後の記者会見を行う3月、6月、9月、12月に利上げが決定され記者団との一問一答で丁寧に説明された。然るに来年からは、1月、5月、7月、11月のFOMC後にも記者会見が行われる。ゆえに、全てのFOMCが「ライブ」で「無風」の金融政策決定会合は無いのだ。

かくして、最重要経済データである本日発表の米国雇用統計への注目度が何時になく増している。

金利を生まない金にとって利上げ回数が減ることは上げ材料だ。

なお、市場内部要因として、連日の極めて荒い値動きにより株式・債券・商品市場の流動性が著しく減少していることが懸念されている。一説には高速度アルゴリズム取引は取引量の8割を占めるとも言われるほどの状況だ。そこで市場が異常な乱高下に陥ると、トレーダーたちがスイッチをOFFにしてしまう。売値買値を提示するマーケットメーカーが減り価格変動が増幅するという負の連鎖である。市場価格に連動することが売り物のETFも激しい値動きに追いつけず、原資産価格からの乖離現象が目立つ。

FOMC後の記者会見が増えたことで来年の乱高下の回数が増えるは必至だ。 

こんな時でも私の食い意地は萎えず。おなじみ京都祇園「らく山」で供される冬の海老芋が育ってきた。これだけ大きくても大将の熱の通し方が抜群だと食感がムースみたい。たまらんわ(笑)。

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2018年