豊島逸夫の手帖

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トランプ外交漂流「本能寺」はロシアだったのか

2018年4月12日

「ロシアはシリアに発射されたミサイルは全て打ち落とすと明言している。ロシアよ、覚悟せよ。ミサイルが来るぞ。それも新型のだ。ガスで人を殺して楽しむ輩と結託するな。」

過激トランプツイートに慣れているはずの市場も思わず反応してしまうほどにエスカレートして挑戦的好戦的な言い回しだ。

シリア化学兵器使用がキッカケだが、敵は本能寺ならぬ、敵はロシアであったか。マーケットは米ソ冷戦を想起する。

トランプ政権が北朝鮮問題や対中貿易摩擦に当面手打ちを模索していることも納得がゆく。

トランプ政権のロシア共謀疑惑を払拭するには、ロシアを叩くことが最も効果的と読んだのか。

時あたかもモラー特別検察官のロシアゲート捜査が核心に迫りつつある。モラー氏のお膳立てでトランプ氏顧問弁護士(コーエン氏)事務所に強制捜査が入った。同氏は女性関係の手切れ金13万ドルを提示したとされる。

そこでトランプ氏はモラー特別検察官罷免をちらつかせる。1973年に当時のニクソン大統領がウォーターゲート事件を捜査していたコックス特別検察官解任を3人の司法省担当者に命じた「土曜の夜の虐殺」の事例が改めて市場で語られる。

更に共和党の代表的良識派ライアン下院議長が突然の中間選挙不出馬宣言。負け戦と見切ったかとの観測も流れる。共和党内部亀裂、11月には民主党下院与党のシナリオにトランプ氏の焦りが透ける。

市場ではNY原油先物WTIが66ドル台乗せ。70の大台も視野に入る。冷戦時代の遺物とも言われてきた有事の金も復活の兆し。金価格はレンジを上放れ1350ドル台を突破した。NY株もダウ平均がいきなり前日比200ドル以上急落した後、概ね下げたまま大引けを迎えた。

北朝鮮問題、米中貿易摩擦、中東情勢不安、米ロ冷戦懸念が複合的に絡み、リスクオフが一過性では終わらないリスクシナリオも指摘される。

2018年