豊島逸夫の手帖

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3%ショック、日本にも波及

2018年4月25日

米10年債利回りが一時3%の壁を突破した。

キッカケはやはり原油高。トランプ大統領の激しいイラン敵視発言で中東不安の火に油を注ぎ、ブレントが75ドルをつけた。

イラン核合意を「正気の沙汰ではない。(insane)」「酷い。(terrible)」と表現。更に「核合意廃棄によりイランが核開発を再開すれば、これまでより大きな問題を背負うことになる。イランは核再発再開にまで至らず。」と威嚇的発言を繰り返した。折しもイランとの核合意死守の立場にあるフランスのマクロン大統領が米国を訪問中のことだ。

その結果、原油価格続騰が市場のインフレ懸念を強めドル長期金利大台突破となった。インフレ懸念はNY金にも波及。金利急騰でも金が買われている。インフレヘッジの金買いが(やっと)出始めた。

その長期金利3%突破はNY株式市場にも波及。

ダウ平均は寄り付き前日比131ドル高まで上がった後、日本時間午前3時過ぎから急落し、一時は619ドル安まで下がった。その後戻し、424ドル安で引けるという大荒れの展開だった。

米債券市場で10年債利回りが3%の水準を維持できるか否かは未だ不透明だ。徐々に3%の大台を固めてゆくのであれば、米国経済好転を映す現象として好感もできる。

しかし「新債券王」として知られるカリスマ投資家ガンドラック氏が予測するように、3%の大台突破後金利上昇が加速するというシナリオは株価にとって悪材料となる。

更に市場が意識するリスクが二つある。

まずイールドカーブ平坦化が続き、米2年債と10年債の利回り格差が0.5%前後まで縮小していることが不気味だ。景気後退の兆しとされる。景気循環サイクルからも米国経済のリセッション入りの可能性が常々市場内で議論されている。

次にパウエル氏率いるFRBが金融政策の舵取りを誤るリスク。

トランプ大統領の減税というカンフル剤により景気過熱懸念も指摘される中で、パウエル新FRB議長は粛々と年3回もしくは4回利上げ実行の方針を滲ませる。しかし利上げを急ぎすぎて景気が失速。一転、利下げを迫られるというシナリオも絵空事とは言えない。

一方、歴史的視点で見れば長期金利3%は依然低金利である。それでも市場が金利高に過剰な反応を示すのは、リーマンショック後の非伝統的金融政策によるゼロ金利に慣れ過ぎたからであろう。ウォール街の最前線で働くトレーダーたちの多くは社会に入ってからゼロ金利時代しか知らない世代だ。それゆえ0.25%の利上げでも重く感じる。長期金利3%をアンビリーバブルと大袈裟に表現したりする。それゆえ株式市場の日中のボラティリティーも激しくなる。

ゼロ金利慣れした市場が3%というニューノーマルに適応するまでまだ時間を要する。その間ドル長期金利3%の衝撃は世界に拡散してゆく。特にドルが素直に金利水準に反応するようになり、結果的にはドル高がトランプ大統領の通商政策をより強硬にするかもしれない。

日本にはNY発の円安をもたらした。しかし世界的金利上昇の荒波が日本の株式債券市場にも波及するリスクを覚悟せねばなるまい。

23日には黒田総裁が米国CNBCテレビに生出演して英語で「円は時々強くなりすぎる。」、「円が安全通貨とされることは理解できない。」と語るシーンがNY市場に流れた。帰国早々の日銀金融政策決定会合後の記者会見でも、世界的金利上昇を含めた新たな展開に質問が飛び出しそうだ。

ドル長期金利3%突破は他人事ではない。

金価格については地政学的要因にインフレ懸念が材料に入ってきたことで、金利上昇による下げ効果が相殺されている。

2018年