豊島逸夫の手帖

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「国債」は兵器にもなるという話

2018年1月11日

米中通商戦争が激化の様相ですが、昨日はブルームバーグが「中国は大量保有する米国債を売るかもしれない」と報じて、米国債が売られドル長期金利が急騰するという一幕がありました。中国は最大の米国債保有国。2017年10月時点で1兆1892億ドルに達します。ちなみに僅差二位が日本で1兆939億ドル。

もし中国が保有米国債の一部を売り浴びせたら、ドル長期金利は急騰。債券市場発の大混乱が株式・外為・金市場に生じるでしょうね。トランプ大統領を相手に通商交渉となれば、その可能性をちらつかせても不思議は無いと思います。但し、そんな手を使って米国債の価値が減価しても、一番損をするのは最大の保有国=中国になりますからね。しかも米国債市場規模は14兆ドルと圧倒的な流動性を誇ります。中国が売れば喜んで買い手に廻る人たちがいますよ。近年は金・円と並び米国債は「安全資産」の代表格ですから。しかもゼロ金利の時代に年率2%以上のイールド(利回り)は投資家にとって悪くない話でしょう。事実、昨晩の米国市場で米国債入札があったのですが順調に買われていました。その結果、米国債市場も落ち着きを取り戻しています。

なお昨日も書いたように、米国10年債の利回りは2.5%台まで上がってきたので「債券王」と呼ばれるようなカリスマ債券投資家が「もう債券バブルは終わった。」つまり、債券が買われ過ぎて金利が低くなる状況がこれで終わると語って話題になっています。

金利が上がり始めると金利を生まない金にとっては辛い状況になります。問題はインフレ率。インフレになれば名目金利が上がっても実質金利は下がる。しかし、現在の低インフレ現象が続くと実質金利がずっしり重く感じられます。一方、低インフレだと利上げ回数は減るのでドル安になり金には買い要因になるという面もあるのでややこしい。多分、明日あたりに日経紙面でそんな話をするかも。

最後に日本株についての話題。2017年、日銀の日本株ETF買い総量は5兆9033億円。一方、あれだけ騒がれた外国人投資家の買い越し額はたったの7532億円。日銀の日本株保有総額はなんと24兆円にまで膨らみました。まさに株式市場は日銀依存症が確認された統計ですね。出口戦略でどう処分する気なのか。万が一日銀が売り始めたら日経平均はあっという間に1万6千円くらいに暴落するでしょう。だからクロダさんは口が裂けても言えない。でも日銀が日本の主要企業の筆頭株主などという現象を続けるわけにもゆかない。私はどこかで臨界点が来ると思っています。まぁ今年は大丈夫でしょう。

2018年