2018年6月1日
「米国民に他意はない。いずれ常識が戻るだろう。しかし今回の決定にその兆しは見られない。」「過去150年の歴史でノルマンディーからアフガニスタンまで戦いと死を共にしたではないか。そのカナダが米国安全保障上の脅威とは信じがたい。」
トランプ政権の追加関税発動を受け、トルドー・カナダ首相の苦渋に満ちた記者会見発言だ。
同じく、これまで除外されてきた鉄鋼25%アルミニウム10%の追加関税適用を6月1日付けで解除されたEUの反応は、官僚的で憮然と事務的に報復関税を示唆する。
米国の鉄鋼・アルミの国別輸入量を見れば中国は僅かだがEUは大きい。貿易戦争がいよいよ実弾発射の交戦状態にエスカレートした印象を受ける。
米国通商幹部は中国で過剰生産される鉄鋼が第三国の製品経由で米国内に輸入されている故、同盟国に対してもやむを得ない措置と説明する。
中間選挙をにらむトランプ大統領の一策とも見られるが、米国内の反応も複雑だ。鉄鋼・アルミ国内価格上昇による製造業コストアップもいよいよ無視できない状況だ。ピーナッツバター価格に至るまで市民生活へも影響を与える。
中間選挙で共和党不利の状況がトランプ大統領の焦りを生み、保護主義が激化するという負の連鎖の影響は、世界の株価にも波及する。
NYダウ平均もイタリア・リスク後退で反騰していたが、再び251ドル急反落した。
なお自動車に対する25%課税案に関しては特定の国名は挙がらず、同盟国側から憂慮の声が相次いだ。しかし今回は対象同盟国が特定されている。
日本側の視点では、これまで同盟国の中でなぜ日本が「追加関税適用除外国リスト」に入らないのかとの不満があったが、今回の措置はその状況も変えた。今後G7の舞台などで、米国を取り巻く同盟国と米国との間の議論が白熱しそうだ。