豊島逸夫の手帖

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金急落、原油60ドル割れ、サウジの誤算

2018年11月12日

ドル高、原油安に引っ張られNY金も1210ドル前後まで14ドルほど急落。

金の下げはレンジ内だが原油は相変わらずの荒い展開。

特に、市場の関心はNYのWTI原油先物が35年ぶりとされる10日連続下げを演じていること。

1か月前にはサウジ記者殺害によりサウジが原油を武器として使うシナリオが懸念され、原油100ドル説が流れたほど。

それが今や60ドルの大台を割り込み、40ドル説さえ跋扈(ばっこ)する。

需給だけでは到底説明できない激変だ。

その背景にはサウジ側の二つの誤算があった。

まず、サウジ記者殺害事件の影響が長引きサウジ孤立化を回避するため、トランプ政権の原油高批判に対しサウジ側も協調の姿勢を具体的に示す必要が強まったこと。

次に、サウジはそもそも米国のイラン産原油輸入禁止措置でイラン産原油輸出が激減すると読み増産に動いたわけだが、結果的にそれが先走りフライングになってしまった。トランプ政権が日本、中国、インドなど石油消費大国に次々と輸入禁止適用除外措置を適用したからだ。180日と期限付きでサウジの増産余力にも疑問符が付くが相場への心理的影響は大きかった。供給過剰懸念を囃し原油投機筋は売り圧力を強める。

しかも、サウジ系シンクタンクの「OPECなき世界」についてのレポート作成(前回の本欄で詳述)が長期的視点でのOPEC解散シナリオを想起させた。既にサウジと非OPECが接近してNOPEC(OPEC素通り現象)が顕在化している。

かくしてOPECのタガが緩むと投機筋の価格形成主導力が強まる。

そもそも金融規制のためのドッドフランク法により大手投資銀行は相次いで原油売買部門の縮小・閉鎖を強いられ、売買を仲介する潤滑油を失った原油市場は参加者が激減している。流動性が減った市場に高速度取引を駆使して投機筋が売買攻勢を仕掛ける。

短期的には原油下げ圧力が先週金曜日のようにNY株下落の主因となるような市場環境が続くであろう。

中期的には米中貿易戦争が中国の原油消費に与える影響が注目される。原油需要の中核をなす新興国経済の消費動向が材料視されよう。

供給サイドではイラクの有力油田キルクークがイラク政府とクルド側の交渉で生産再開の報道も流れる。

更にロシア国内では生産者の増産圧力が強まっている。

ドル高進行もコモディティーの売りを誘発する。ドルインデックスも先週金曜日に67の大台が視野に入る水準まで上昇した。

地政学的リスクと各国の思惑が交錯する中、原油価格急落現象がインフレ率への影響を通じてFRBも金融政策面で無視できない状況になっている。

さて昨日は日経Wアカデミーのセミナー@新潟。出席者の4割が女性。最近のセミナー光景もシニア中心から女性増加の傾向が顕著。壇上から見ても、女性参加者の方が頷いたり、不可解な表情を見せたり反応が素直でノリがいい。

そして新潟と言えばスキーフリークの私は冬季、越後湯沢で50日は過ごす「新潟県民」。今回は越後湯沢から更に50分の新潟市。新幹線から眺める秋の越後湯沢は紅葉で新鮮に映った。なんせ雪のガーラ湯沢しか知らないからね~。帰途、途中下車して越後湯沢で降り、町営源泉「山の湯」に浸かって行こうと思って新幹線トキに乗ったら、なんと長岡から大宮までノンストップ。

越後土産にいただいた「南蛮エビ煎餅」。普通のエビ煎餅とは全く違う。濃い(赤い太い甘い)エビ風味が後を引く。新幹線内でポリポリ。それにしてもスキーシーズンが待ち遠しい。このセミナーも1月、2月だったら良かったのに(笑)。

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2018年