豊島逸夫の手帖

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FRB経済誤認リスクに身構える市場

2018年11月19日

FRBの経済見通しは楽観的過ぎるのではないかとの議論が台頭してきた。

パウエルFRB議長が世界的な景気後退が市場では意識され始めているこの時期に、粛々と利上げを進める姿勢を明らかにしてきたからだ。

この週末も新たな懸念材料が噴出した。

まずAPECが米中非難合戦の中、事実上の決裂に終わった。

ブエノスアイレスG20の場で予定されている米中トップ会談に市場は緊張緩和の期待を寄せてきただけに失望感が強まる。ただでさえNY市場は米中高官発言に一喜一憂して乱高下を繰り返す地合いが続いている。

更にサウジ記者殺害事件をムハンマド皇太子が「命令」したとCIAが結論付けたとの報道も衝撃を与えた。サウジマネーが「ダーティー・マネー」(汚れたマネー)とされるリスクがある。サウジが出資するテスラ、ウーバー、エヌビディア、ツイッターなどの企業やブラックストーン、そしてソフトバンクのファンドなどが踏み絵を踏まされる可能性を市場は注視する。

ブレグジットも今後7日間が最後の正念場とされる。

このような市場環境では利上げは「一回休み」が適当との議論が浮上している。今年12月か来年3月のどちらかは利上げを回避すべきとの見解だ。

先週金曜日のNY市場では、クラリダ新FRB副議長が初のテレビ生出演で多面的に語ったが、市場は特に利上げに慎重な発言を材料視した。

外為市場では円相場が113円前半から112円後半へ円高ドル安に振れるキッカケとなっている。

「FRBは世離れしている。私の方が民間CEOたちから景気懸念の発言を色々聞いている。」と人気投資家ジム・クレーマー氏が不満をぶつけたことも市場の懸念を代弁している発言と受けとめられた。

イエレン前FRB議長の時代には「FRBには逆らうな。」と言われたが、パウエル時代に入ってからは「FRBを疑え。」との言い回しが目立ち始めている。

NY金はドル安に反応して1220ドル台まで反騰。(グラフkitco参照)

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前にも書いたが万が一12月利上げが見送りになると、市場には完全に織り込まれていることがちゃぶ台返しでひっくり返ることになるのでドル急落、金急騰になる。以前書いた時点では「万が一」だったのが、今は「万が百」くらいには上がったかな(笑)。それでも百分の一程度の確率。余程の米中悪化とかサウジ米国決裂とか極端なシナリオだ。

ところでライザップの株が暴落。一時は1400円台まで上がっていたのが今や200円台。要はM&Aで広げ過ぎたということなのだが、それにしても極端な株価変動。こういう事例を見ると株価は底割れするけど実体の価値がある金価格は底割れしないということを改めて痛感するね。

米国ではフェイスブック株価が下げ止まらない。大統領選ロシア介入疑惑にフェイスブックが利用され、それに対しての対策が後手後手に回り、今やあのサンドバーグ女史(COO)の責任問題にまで発展している。彼女は働く女性の象徴的存在で本もベストセラーになった。私は元々フェイスブックをやっていないので強い感想はない。友達申請したとかされたとか面倒くさい(笑)。SNSは一方的情報発信用のツイッター@jefftoshimaとひたすら仕事用のLINEだけ。

 

2018年