豊島逸夫の手帖

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FRBを疑え、金融政策不信が株価急落誘発

2018年12月5日


債券市場がFRBの金融政策運営に不信任票を投じている。米国経済は利上げ継続に耐えうるのか。FRBの経済見通しは楽観的過ぎるのではないか。FRBが判断を誤るリスクがマーケットで意識され、その不安感が米中会談懐疑論と共振してダウ平均ほぼ800ドル急落を誘発した。金市場でもようやく「経済有事の金買い」が顕在化している。

イエレン時代は「FRBに逆らうな。」と言われたものだが、パウエル時代に入り「FRBを疑え。」が市場のスローガンになりつつある。

長短金利逆転現象も世界経済減速懸念とともに金融政策混乱を映す現象として不安視される。

しかもトランプ大統領はFRB批判のトーンを強めている。「FRB議長人選を誤ったかも。」と語って憚らない。株価急落も「ジェイ(ジェローム・パウエル氏のニックネーム)のせいだ。」と言い出しかねない。それを予期してかムニューチン財務長官は「FRB議長の仕事は非常に難しい。ジェイはオバマ時代の遺産(量的緩和の後始末)を処理せねばならない。」と同情的に発言している。


昨晩の市場の話題は、最も代表的な逆イールドとされる2年債と10年債の利回り格差がマイナスになる現象がいつ起きるかということであった。来年前半か或いは12月利上げ直後か。意見は割れる。更に仮に逆イールド現象が生じたとして、そこから危惧される景気後退が始まるとすれば、どの程度のタイムラグがあるのか。半年か一年か。少なくともいきなりリセッションとはなるまい。などなど様々な見解が飛び交う。

そもそも逆イールドは本当に景気後退のシグナルと言えるのか。過去の事例と比較すると経済環境が劇的に変化しているので「今回は違う」のではないかとの反論も根強い。

なお、市場内要因としては「長短金利逆転」というキーワードがアルゴリズム・トレードのソフトウェアにインプットされ機械的に売り注文が発動されたことにより、売りの連鎖が生じていることが無視できない。ほぼ800ドルものダウ急落はAIに任せるリスクも浮き彫りにしている。NY市場では昨日の日経平均500円超急落も長短金利逆転を先取りしたAIの動きが連想されていた。


NY金先物市場では1200~1230のレンジから上抜けたとの判断から新規買いが出ている。金融政策不信を映す金急騰と言えよう。単なる投機だけではなく根は深い。


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2018年