豊島逸夫の手帖

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注目の日銀、どう動く、海外マネー

2018年7月30日

今日の話は債券市場の話題で分かりにくいと思う。スル―して結構。

今週、日銀が市場の台風の目だ。

いよいよ日銀も量的緩和政策終了に向かって動きだすのか。既に円の長期金利は0.10%まで急騰。なんだ、こんなに低金利と思われるかもしれないが、0.03%とか限りなくゼロに近い水準で推移してきたので急騰なのだ。これは市場が発する異音。日銀は緩和政策を継続する強い意志表明として、債券市場において0.1%で無制限に国債を買い入れる「指値オペ」を3回に亘って実施。長期金利0.1%以上は許さんという非常手段・断固とした意志表明と言える。債券市場への介入額は1兆6403億円。風雲急を告げる。海外も注目。

そして、いよいよ今日明日と日銀金融政策決定会合が開催中。

これほど日銀金融政策決定会合が世界の市場の注目を集めることは極めて珍しい。

しかし日銀の次の一手に関する想定にはかなり温度差を感じる。

日本市場では金融政策微調整が議論されるが、欧米市場ではずばり日銀テーパリング(量的緩和縮小)が先走り気味に意識されている。

トレーダーのレベルになると、日銀のイールドカーブコントロールに関する知識も危うい。日本についてコメントできるほどの知見を持つトレーダーはNY市場で無作為に抽出すれば決して多くはない。外電の見出しに日銀テーパリングという単語が躍ると、短絡的にいよいよ日銀も出口に動くかとの連想で円買いに走る。

それ故せいぜい金融政策微調整という結果が伝わると、円高圧力は弱まりそうだ。米GDP4%超えなど米国経済絶好調を背景に、NY市場ではドル買いエネルギーが円買いエネルギーを遥かに凌ぐ。

但し日銀への注目度は「高止まり」の様相だ。

欧米中銀が量的緩和終了・縮小に動く中で、今や量的質的緩和政策全開の日本は過剰流動性の輸出国となっている。長期金利を直接的に抑え込む異例のイールドカーブコントロールも世界の金利上昇を抑えるアンカー役を果たしている。日銀なかりせば欧米国債利回りはもっと上がっていたであろう。過剰流動性に支えられるNY株も今より低い水準となった可能性がある。「サンキュー、ミスタークロダ。」NYヘッジファンドの本音とみた。

この日銀アンカーが本格的に弱まり、世界金利に持続的上昇圧力をかけるのは来年となりそうだ。2019年には100円程度の円高も覚悟せねばなるまい。日銀金融政策決定会合が常に注目されそうだ。NYの大手投資銀行では即製日銀ウォッチャーが出現しつつある。

なお日本株に関して最大の注目はやはり日銀株ETF購入の出口だ。日経平均の日銀プレミアムは4000円程度などと語られる。ETF購入なかりせば現水準より4000円は低かったはずとの推論だ。日経平均からTOPIXへの移行、購入対象銘柄入れ替え程度であれば大きなサプライズはない。しかし日銀保有日本株25兆円相当の出口は?とNYで聞かれると筆者も明確な回答に窮する。2019年にかけて日本株が避けては通れない疑問であろう。ミスターアベの三選より、ミスタークロダの発言に市場は身構えている。

金利を生まない金にとっても金利上昇は気になる話。名目金利から物価上昇率を差し引いた実質金利の動きが勘所となる。実質金利がマイナスなら金にマネーが流れやすいが、プラスならマネーが金から流出しやすい。

2018年