豊島逸夫の手帖

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トランプ・黒田発言とコインチェック大騒動

2018年1月29日

26日金曜日は、なんという一日!ダボス会議の要人発言に加えコインチェック大騒動。

まず日本時間26日深夜の黒田発言が、同日早朝のトランプ発言による円安効果を帳消しにした。金価格も高値圏で乱高下している。

問題の黒田発言は、ダボス会議でのパネルディスカッション中にモデレーターの質問に答える中で起こった。

モデレーターが「貴方は就任時に2%目標を発表しました。経済の(好調な)現状を考えればもう達成しているはずではないですか。それなのに、なぜインフレがないのですか(Why no inflation)。」とやや語気を強め、黒田総裁に詰め寄る如き口調で質問を放った。

それに対し壇上で黒田総裁が苦笑しつつ「グローバリゼーション、技術開発、そしてアマゾン効果など、世界共通の面と日本特有の面がある。15年以上に及ぶデフレの結果、デフレマインドが企業と家計においてかなり強い。とは言え、インフレ期待がやや(slightly)上昇しつつある。物価目標に遂に近づいている(We are finally close to the target)。」と語った。

結果的に、モデレーターのやや挑戦的とも聞こえる語調を否定する如きトーンとなったことで市場への印象度が強まった感がある。質問者が声高に迫るなど、日銀金融政策決定会合での記者質問ではまずあり得ない光景だ。

英語でfinallyを使ったことも「苦労したがやっと」という達成感が滲む如きニュアンスになる。

そこでアルゴリズムは「出口視野の発言」と読み取り、円高に反応したわけだ。

なお、市場内での日銀出口観測に関しては、内外で若干温度差が見られる。23日の金融政策決定会合後の記者会見で、黒田総裁が出口観測を強く牽制したことで日本時間では円安に振れたが、欧米時間で円高に転じた事例も記憶に生々しい。国内では一般的に年内出口に実際に動く可能性は低いと見られているが、欧米市場ではFRB、ECBに次ぎBOJも「遂に」動くとの観測が根強いのだ。それゆえアルゴリズムにも注目材料として組み込まれているわけだ。日本側から見れば「いつもと同じ」とも思えるような黒田発言に対して、集中的な円買い注文を発動することになる。

更に言えば、そもそも日本語の曖昧な表現も英語に訳されるとニュアンスが強くなる傾向がある。それゆえ外遊先での質疑応答は要注意だ。

黒田総裁は英語が堪能なだけに今回のように英語のパネルに登壇して通訳なしで語るが、ネイティブではないというハンディキャップは否めない。言葉を選び注意深く発言しているが、親しい中銀総裁などの出席者に囲まれる壇上は日本にいる時よりリラックスした雰囲気にもなる。質問者も遠慮しない。

今後も通貨投機筋が自分たちのポジションに都合の良い解釈をして円相場を動かす傾向には要注意である。

同時に市場の円高圧力の強さを思い知らされる事例ともなった。

そして週末のコインチェック騒動。

私もミヤネ屋で仮想通貨について説明しました。

ツイッターでは「コインチェック事件の教訓。セキュリティー対策は、直ぐに顧客獲得にならず後手にまわりがち。CMにはカネを使ったが、ハッキング対策には予算廻らず。」と呟いたら10万を超えるアクセスがありました。

更に、2017年12月13日付け本欄「ビットコイン急騰、破綻企業に巨額の恩恵」でマウントゴックスの事例を書いていたので「コインチェックがなぜ全額返済できるのか。マウントゴックスの事例を昨年12月に書いた。創業者の保有仮想通貨価値が全額返済しても2000億円余るほど。」とも呟きました。

仮想通貨は専門的知識が必要なので、やさしく説明することはほぼ不可能だと実感しています。

2018年