豊島逸夫の手帖

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異常気象で儲ける水投資

2018年12月11日


豊富な地下水を持つ土地が買われている。そこに新たなワイン畑を作りインカムを得る。
最近ヘッジファンドたちとの会話で議論されるようになった「水投資」である。


カリフォルニア大規模森林火災はワイン畑にも甚大な被害を与えた。そのワイン畑に投資していたのが米国最大の年金基金であるカルパース(カリフォルニア州職員共済年金基金)だ。所謂オールタナティブ投資(代替投資)である。同年金基金はお隣のワシントン州で植林事業にも投資した。苗木を植え、育て、最終的に材木として販売する長期投資だ。材木ファンド(timber fund)も組成された。しかし、この植林投資も近年相次ぐ山火事で致命的被害を受けた。


この一連の代替投資を始めたカルパースの元CEOのもとで、筆者は6年間働いたことがある。「伝統的アセットクラスだけではもはや分散が効かない。」これが口癖だった。名前はジェームス・バートン氏。その当時、米国年金界では先進的な投資リーダーと言われた。同氏が新たな年金代替投資先として金市場に注目して、金ETFを初めて組成し、上場させる過程でアシストしたことが同氏との仕事関係の発端だった。
実際にカルパースが投資したワイナリーや森林に案内されたこともあるが、異常気象で今や全滅の危機にある。


そこで代わって登場したのがハーバード大学基金だ。
異常気象で希少性が増す水資源に目をつけ、冒頭に述べた水投資を始めたのだ。
カルパースもハーバード大学基金も、長期投資部門ではリーダー的存在だ。
そこにヘッジファンドが目をつけると、当該不動産価格がバブルになりかねないリスクも孕む。
とは言え、新たな投資セクターとして、水資源豊富な土地は有望であろう。

2018年