豊島逸夫の手帖

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FOMC後の記者会見、株も金も乱高下

2018年12月20日

連日記録的乱高下に晒されているNY株式市場は、FOMC後の記者会見でパウエル議長からの励ましの言葉を期待していた。ダウ平均も寄り付きから300ドル超上げていた。

しかし、その記者会見が進行するにつれ、一時はダウ平均が500ドル超安まで売り込まれた。この時点でアルゴリズム・プログラム売りを発動させたキーワードは「自動操縦autopilot」という単語だった。FRB資産圧縮プログラムは既定路線に沿って自動操縦で実行するという意味で使われた。イエレン前FRB議長が決めた既定路線では、2019年からFRB保有国債MBS(住宅担保証券)売却によるFRB資産圧縮を月間500億ドル、年間6000億ドルのペースで本格化させる予定だ。円換算では毎月約5.5兆円、年間では60兆円ほどに達する金額である。一方、金利政策に関しては2019年には2回利上げと述べた。これもサプライズ。

本欄でも詳述してきたように、市場とFRBの間には2019年利上げ回数予測に関して、これまでにない差があった。市場では1回かゼロ回予測に傾いていた。対してFOMC参加者の金利予測(9月FOMC時点)では2回、3回、4回、5回がそれぞれ4名いた。いずれどちらかの方向に収れんするはず。今回のFOMCがそのヒントになると見られていた。結果的にはFOMC参加者側が市場側に近寄ったのだ。2019年2回利上げはFOMC側とすればかなりのハト派的予測修正だ。しかし市場から見れば2回というのはゼロから1回よりは多い。株価が異常な乱高下を続け逆イールド現象が発生し市場は明らかに異音を発しているのに、金融政策の助け舟がこれでは未だ足りないと不完全燃焼状態になったのだ。この失望感が売りの連鎖を生んだ。

しかも、FRBの2019年米国経済見通しも下方修正された。GDPは2.5%から2.3%、インフレ率は2.0%から1.9%に引き下げられたのだ。そもそも物価上昇が鈍化している時に利上げと資産圧縮の両面作戦で引き締めるのか。オーバーキル(締め過ぎ)のリスクを市場は懸念する。更に関税引き上げにより国内物価が上昇するような事態になればスタグフレーションのリスクさえ意識される。保護主義の副作用で物価は上がるが経済成長は鈍化するという最悪シナリオだ。

2022年以降の長期でもFRB経済予測ではGDPが1.9%、失業率は4.4%、インフレ率は2%と明らかに景気後退を見込んでいる。

中立金利も3%から2.8%に引き下げられた。中立金利水準を示す2022年以降の予測金利はドット・チャートによれば、2.5%予測が4名、2.75%が5名、3%が5名と前回に比し3%以下の予測が増えている。下のグラフはFRBが一般に配布している四半期経済レポートの中のドット・チャートグラフで、2019~2022年にかけて3%前後に収れんしてきていることが分かる。

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更にドット・チャートを精査すると、2020年以降、利上げサイクルは終了して2022年以降は利下げもあり得る形になっている。2018年から2022年以降にわたる金利トレンドラインが一貫した右肩上がりではなく、頭打ちから緩やかな利下げを示唆しているのだ。

仮に利下げとなれば中立金利が2.8%程度なので、利下げ幅も限定的で景気浮揚の政策効果が十分に発揮されるとは思えない。その場合は資産圧縮を縮小・停止するのか。あるいは量的緩和を再開するのか。市場の疑念は募る。

株が下がればFRBが助け舟を出すというパウエル・プットを期待した市場は裏切られた。「FEDには逆らうな」から「FEDを疑え」への移行が益々顕著だ。

金も1260ドル近くまで急騰後1240ドル台へ急落。

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価格変動を繰り返しつつ価格水準は切り上がっている。株投資家の不安感が募るので中期的にマネーが債券と金に流れる。債券と金の共通点は悲観論で育つこと。対して株は楽観論で育つ。ゆえに分散投資効果があるのだ。NY市場では巨額のマネーが株ファンドから流出している。

 

2018年