2018年9月12日
投機筋の代表格とされるヘッジファンドだが、日本株買いの形態は多様化している。日銀の出口戦略に関する思惑で売りの波状攻勢を仕掛ける時もあれば、イベントがなく商い薄い地合いの時にプロ同士で先物売買の空中戦を演じることもある。これらの例では商品投資顧問(CTA)のコモディティートレーディングアドバイザーが、人工知能(AI)を駆使して超短期の売買を繰り返すことが多い。一方で、グローバルマクロ系のファンドは中期的な政治経済の流れを読み、日本株を一定期間保有する目的で買ってくる。
足元でヘッジファンドの日本株買いが材料視されているが、まだウォーミングアップの段階だ。米国株に高値警戒感を抱くファンドは専ら欧州株をオーバーウェイトに動いている。日本株と米国株はニュートラル。新興国株はアンダーウェートだ。基本的に欧米セントリック、つまり欧米中心の運用で日本株はまだまだエキゾチックな投資セクターである。
しかし欧州株も不安を抱えるイタリア、波乱含みのブレグジット、金融政策が不透明な欧州中央銀行(ECB)、対米関係の軋みなど不安定要因を抱えており彼らは長居する気はない。
安倍晋三首相の3選は材料として鮮度は低いが、先進国で安定的政権の存在は今や「絶滅危惧種」とのコメントが印象的だ。日本株という選択肢は運用の定番メニューには入っているので、地域別循環物色の過程で出番が回ってくるだろう。但し、2019年は日銀の出口戦略が現実味を帯びると見られており、年内には売り戻す姿勢だ。特に日銀による上場投資信託(ETF)購入には違和感を覚える。物言わぬ株主である日銀の保有株がどのように処分されるのか、それともされないのかについては議論が沸騰している。
金についてはヘッジファンドが引き続き売りの姿勢だ。NY金先物市場で金売り攻勢が強まるリスクがある。