豊島逸夫の手帖

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泰山鳴動して鼠一匹、AI主導の市場

2018年12月13日

まずファーウェイ問題の続き。

日本でもNHKのトップニュース扱いになって注目されるに至った。

テレビ画面でお馴染みになった同社創業者娘CFO(46歳)の保釈条件が興味深い。

追跡装置とは足首に装着する足枷みたいなアンクレットのこと。24時間3名の監視役。夜11時から朝6時まで外出禁止。保釈金が8.5億円ほど。

そのうち3億円ほどを「保証人」が用立てている。そのメンツが出入りと思われる不動産屋さん、保険屋さん、家政婦さん、ヨガ教師。旦那さんは短期ビザなので保証人になれず。

そして米国への引き渡しの裁判だが、カナダではこの種の裁判は10年単位で長期化が普通とのこと。仮に米国に引き渡され有罪確定となれば、最低でも30年服役をくらう。だから司法取引に応じるのだろうね。

なんかこの一連の物語、生い立ちとか人民解放軍との関係とか、パスポート7つ保有とか、映画化されたらヒットするよ(笑)。

さて今日の本文。お題は「泰山鳴動して鼠一匹、AI主導の市場」。

利上げ、ブレグジット、米中通商交渉。

昨晩は市場の三大テーマ揃い踏みの展開となった。

口火を切ったのは米国時間早朝発表された米消費者物価上昇率。低めに出れば利上げ期待後退が予想されたが、結果はコアで前月比0.2%上昇と事前予測通り。利上げ見通しを変えるほどの数字ではなかった。ノイズだけが目立つ。トランプ大統領は「来週の利上げなど馬鹿げている。」と執拗にパウエルFRB議長を牽制。新債券王と呼ばれるカリスマ投資家グンドラック氏は「利上げに動くFRBはsuicide mission=特攻隊。」と語った。市場では来週FOMCの利上げはほぼ織り込み済みだが、注目はパウエル議長記者会見だ。10月に「中立金利から遠い。」とタカ派的に発言したが、その後「中立金利に近い。」とハト派的に語り市場混乱を招いただけに、記者会見でパウエル議長が踏み絵を踏まされる展開が想定できる。ここを見極めねば市場はうっかり動けない。

次にブレグジット。200対117で保守党内ではメイ首相がかろうじて信任を得た。とは言え、党内造反者117名を抱えたままで次は労働党を含めた議会全体の信任を取り付けねばならない。昨日のポンド相場は絵に描いたような投機筋の「噂で買ってニュースで売る」展開。事前の票読みでメイ首相信任を先取りするポンド買いに走り、いざニュースで現実となればポジション巻き戻しでポンドが売られた。明日はどうなるか、視界完全不良ゆえ日計りトレードがポンド市場を支配する。

そして米中通商交渉。

NY市場オープン直前に、ウォールストリートジャーナル紙が中国「製造2025」修正報道。観測記事で実現性には慎重な見方も両論併記しているのだが、市場はとりあえず楽観的に解釈してダウ平均は450ドル超まで急騰。とは言え、中国がこの国家プロジェクトの根幹を変えるとも思えず。国内製造率2020年40%、2025年75%という数値目標を多少いじる程度か。市場内では冷めた見方も根強く、結局ダウ平均は終わってみれば158ドル高まで上げ幅を縮小した。泰山鳴動してこの程度かとの感触である。

なおファーウェイ問題で市場の注目は、カナダで逮捕されたファーウェイCFOの引き渡しに関してのトランプ大統領ツイート「必要とあれば私が介入する」。通商交渉で中国側が相当譲歩すれば、イラン経済制裁違反も敢えて今回は不問に付すとの「取引」を示唆していると市場は読む。一方、中国側はファーウェイ問題と通商問題を切り離す姿勢も見せているが、その本音も測りかねる。楽観論・懐疑論に割れ、マーケットには引き続き変動要因として残る。

かくしてフィールドではAIが次々流れる報道の見出しに機械的に反応して売買注文を発動。観客席では人間が野次馬か解説役に回る。フィールドに人影が薄い状況は続く。

金価格は下のグラフどおり。1240ドル台で行ったり来たり。値固め。

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最後に写真は季節のミカンのパテ。シンプルで旨かった。


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2018年