豊島逸夫の手帖

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ソロス氏警鐘「EU存続の危機」

2018年5月30日

昨日書いたイタリア政治リスクが次々と世界の市場を直撃している。

市場がイタリア危機に揺れる最中、ソロス氏が「再び大きな金融危機に向かっている。」、「EUは存続の危機にある。」と発言した。

ウォール街ではイタリアの極右政党「同盟」と極左政党「五つ星運動」の連立は、バーニー・サンダース氏とトランプ氏が組むようなものと表現される。

仮に再選挙となれば、実質的にはイタリアのEU離脱を問う国民投票となりかねない。そこでこの両党が勝利するシナリオが最も懸念される。

市場ではイタリア10年債利回りが3%を突破した。とは言え、ギリシャ危機当時の7%台より遥かに低い。その差はECBが量的緩和でイタリア国債を40兆円相当以上購入していることによる。これはECB保有国債総額の15%前後を占める規模だ。しかもECB量的緩和が今年9月まで継続されれば、更に毎月4千億円ほどイタリア国債が買い増される。

ECBは財政ファイナンスのための国債購入を禁じられている。この時期のECBによるイタリア国債買い入れは救済措置と見られかねない。しかし、一国の国債発行総額の1/3までは、「金融政策のツール」として購入を認められているのだ。

ここでECBがイタリア国債購入を停止すれば、市場の混乱を増幅する結果になるのは明らかなので、ECBの出口は遠退いたとの観測が目立つ。これがユーロ下落に拍車をかけている。

これは円高要因にもなるので日銀の出口は益々遠退く可能性も指摘される。

なおECB以外にもイタリア国債の長期保有者としてイタリア民間銀行とイタリア個人が挙げられる。

イタリア国債を大量に保有するイタリア民間銀行はそれを時価評価しなくてよい。イタリア個人も政治混乱慣れしているので国債不安で売却を急ぐ切迫感は薄い。

一方、ドイツ10年債利回りは一時米国10年債3%突破の煽りで0.7%を突破していたが、現在は0.2%台にまで急落中だ。イタリア国債からドイツ国債への「マネー、質の逃避」が顕著である。

更にリスク回避マネーは米国債にも流入。

3%を突破していた米10年債利回りも2.7%台まで急落している。

最新FOMC議事録で利上げに慎重な意見が目立ったこともあり、年内利上げ回数も4回の確率が11%まで急落した。

その結果リスク回避と日米金利差による円買いが出やすい市場環境となっている。日米株式もその煽りを受けて急落。

イタリア不安は日本市場にとっても他人事ではない。

こうなれば金市場にもマネー流入となるはずだが、金価格は1300ドルを割り込んだままだ。欧州政治リスクと利上げ観測後退となれば、もう少し上がっても良さそうなものだが。まずは下げに歯止めがかかったと言うべきか。

2018年