豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. トランプ氏、浮気の代償、市場を揺らす
Page2616

トランプ氏、浮気の代償、市場を揺らす

2018年8月23日

昨日の続報。若干昨日のブログとかぶるけどね。

裁判所ビル前にカメラが並びマナフォート・トランプ陣営元選対本部長に陪審員が有罪を決めるや、記者たちの集団が一斉にビル内から飛び出し走り去って行った。ほぼ同じタイミングでマイケル・コーエン元顧問弁護士が有罪を認め司法取引に応じたことで、トランプ政権にはダブルの衝撃となった。

トランプ大統領の浮気相手の一人とされるストーミー・ダニエルズ嬢は、今や米国社会で最も注目される女性の一人だろう。人気番組「60minutes」に生出演して生々しく告白した時は、約6千万人の米国人が画面に釘付けになったものだ。翌日の職場はこの話題で持ちきり。高級紙NYタイムズの紙面もタブロイド紙の如き様相となった。

争点となった浮気相手への13万ドルとされる「口止め料」支払いを実行したとされるのがマイケル・コーエン氏。ロシア人富豪関与の可能性も報道され、女性スキャンダルから一気にロシアゲートにも飛び火した。

NYでヘッジファンド14社にレクチャーした時も話題が「モリカケ問題の日本株への影響」に及ぶと「我々は大統領のスキャンダルで慣れている。」と一笑に付されたものだ。

民主党支持のヘッジファンドでも、こと投資となるとトランプ相場のモメンタム(勢い)を失いたくないとの本音も透けた。

足元の企業決算はトランプ減税、規制緩和などの追い風を受け絶好調が見込まれる。

そこに突発的政治要因が出現した。

市場はその衝撃を冷静に受け止めていたが、昨日NY株式市場の後場に入り売り要因としてジワリと効いてきた。ダウ平均も88ドル安で引けている。

欧州外為市場ではロシアゲート捜査進展の可能性を嫌い、ロシアルーブルが急落する局面もあった。

市場の関心は大統領弾劾の可能性だ。ロシアゲート捜査中のモラー特別検察官率いる精鋭弁護士部隊の「勝ち点1」程度では、リスク慣れした市場に激震走るとはならない。

その弾劾のためには下院過半数の動議、上院2/3の賛成が必要だ。特に共和党、民主党拮抗の上院(定数100名)で17人程度の造反共和党議員が出ることは考えにくい。

現実的な市場への影響としては、中間選挙を控え危機感を強めるトランプ大統領が、市場の重荷となった米中貿易戦争で対中攻勢を強める可能性が懸念される。

債券・外為市場では投機筋のドル買い・米国債売りポジションが過去最大級のレベルまで膨張したところだ。この仕掛けの「出口」を模索するヘッジファンドが「大統領弾劾の可能性」を殊更に囃し、ポジション手仕舞いの口実として利用するかもしれない。

昨晩発表されたFOMC要旨は市場に軽くスルーされたが、焦るトランプ大統領のFRB介入姿勢、ドル高牽制発言を強めるシナリオにも要注意だ。

株式市場も基本的には企業業績のファンダメンタルズ重視の姿勢だが「マイケル・コーエン氏はロシアゲート関連でモラー特別検察官が興味を持つ事を語るかもしれない」との報道が流れると突発的展開に身構えざるを得ない状況だ。

金市場にとっては買い材料になるかも。反転要因のひとつ。

2018年