2018年5月25日
昨日本欄で米朝会談暗雲で金反騰もと書いた6時間後に、トランプ大統領が電撃的「交渉見送り」発表に出た。金価格は1300ドル台を回復。金利相場モードに入っていた市場は一転して地政学モードと化した。
一方、日本株を検討していた米国機関投資家は米朝会談延期の報を聞き「It hurts=痛い!」との呟き。
2週間前にNY出張でヘッジファンド15社と年金基金4社と対話したが、中には日本株に興味を示す事例もあった。その「芽」が摘まれてしまった感がある。
今後の北朝鮮情勢について様々な議論を交わしてみると、総じて中国の存在が意識されている。
中国抜きの展開を嫌気して、習近平国家主席が北朝鮮に「入れ知恵」したのではないか。中間選挙向けに早く結果を求めるトランプ大統領主導の先走りに釘を刺したとの見方だ。それゆえ一旦米朝直接交渉のプロセスを振出しに戻し、中国も主体的に関与する形での朝鮮半島非核化を計るシナリオが浮上している。最近トランプ氏より習近平氏の方が外交的に一枚上手との評価が強まってきた矢先のことだ。
更に、これまでのトップダウンでは実務レベルでの根回しが不十分だったので、ボトムアップで練り直す可能性も指摘される。
いずれにせよ、北朝鮮リスク後退が金急落、日本株再検討のキッカケだったので今後も事態を注視する姿勢が感じられる。
「米自動車関税案」もウォール街では米国孤立化を招く新たな案件として歓迎されていない。日本株はその被害者として認識される。
一方、森友・加計問題は、トランプ大統領側の政権スキャンダルに慣れているのでさほど問題視されなかった。
しかし、その後の事態急展開でさすがに政権懸念材料と見られるようになってしまった。
それでもポスト・アベ政権は「保守党」との前提で、経済政策の継続性に関しては極端な変化は見込まれていない。「イタリアとは違う。」とのコメントが印象的だ。
但し、外国為替市場での円高は日本株に関して不安視されている。
NY市場では「安全通貨はドル」との見方も根強い。特に北朝鮮リスクで円買いという投資行動には抵抗感もある。しかし、日本では「安全通貨は円」とされ、政権不安も北朝鮮問題も日本株安も円高要因となる。日米市場で温度差を感じるが、結果的に円高→日本株安→円高加速→日本株続落という負の連鎖が復活するシナリオが懸念される。
そもそも最新のFOMC議事録で早急な利上げに待ったがかかり、ドル高・円安の基調に陰りが見え始めたタイミングでもある。
ドル買いの潮目を巡って見方も真っ二つに割れてきた。ドル円のポジションは殆ど「フラット」だったヘッジファンドの間でも、ドル売りに転換の動きが見え始めた。
「6月相場はかなり荒れそう」と身構える市場である。