豊島逸夫の手帖

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米国年金基金、森林投資で失敗

2018年8月6日

米国最大の年金基金カルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)が森林投資に失敗して損失という事例が話題になっています。

森林投資とは例えば山ひとつ丸ごと買うイメージです。そこに植林されている森の木が年を経て大きく育ったところで、材木として売却することでインカムを得ます。株債券など伝統的資産クラスとの相関が低いので、年金がリスク分散のための代替投資の一環として実行されてきました。森林の木がよく育つか否かは天気・土壌・技術など様々な要因に拠りますが、概ね株とか債券が上がるか下がるかとは無関係ですよね。リーマンショックのような経済危機がウォール街を襲っても森林の生育に影響はないでしょう。因みに金もこの代替投資に含まれます。他の例ではワイナリー投資もあります。

さて、今回カルパースが失敗したのは異常気象や山火事が原因かもしれません。不動産建設ブームが去り木材価格が下落したことも一因でしょう。更にカルパースは森林の木々が充分に育つ前に安く売ってしまったようです。運用難の中での焦りでしょうか。

実は私は前職で、元カルパースCEOのもとで6年間働いたことがあります。その元上司は「伝統的アセットクラスだけでは(リスク)分散が効かない。金や森林やワイナリーなどに投資することで分散効果がある。」を常々語っていました。そのような経緯があるので、この失敗事例が他人事には思えないのです。

米国年金業界では、カルパースが動けば他の年金もフォローすると言われるほどリーダー的存在になっています。カルパース運用モデルが時代の先端をゆく投資モデルとされてきました。それだけに今の投資がプロにも如何に難しいかを物語っています。

2018年