豊島逸夫の手帖

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米長短金利が逆転する日

2018年7月9日

雇用統計で米国経済堅調が確認され適温経済が語られる。

一方で死角は米長短金利差。

雇用統計発表後もイールドカーブ平坦化に歯止めがかからない。

先週金曜日NY引け後の米国債利回りは以下のとおり。

     2年債

     2.545%

     5年債

     2.723%

     10年債

     2.829%

     30年債

     2.938%


良い雇用統計でFRBの年4回利上げ観測は強まり、政策金利と相関性が強い2年債の利回りは上昇が予想される。

昨年12月の利上げ時点では1.8%程度だった2年債利回りが、3月利上げ前後には2.25%近傍まで上昇。更に6月利上げ前には2.5%を大きく超えて現在に至る。もし9月に利上げがあれば、2年債が2.7~2.8%水準まで上昇しても不思議はなかろう。そして12月利上げとなれば、いよいよ3%台も視野に入る。

問題は10年債利回りだ。これはFRBではなく市場が決める。

一時3%を突破したものの直近は2.8%台にまで落ち込んでいる。

理由として新興国経済不安、ECB・日銀の緩和姿勢、雇用統計では鈍い賃金上昇などが挙げられる。

年末にかけて2年債利回りが3%前後で、10年債利回りに追いつき追い越す可能性が絵空事とは言えない状況だ。

とは言えFRBは経済オーバーヒート(過熱)もある程度許容して、インフレ目標2%の持続的維持を計る姿勢も明示している。

市場のインフレ期待がインフレ懸念に発展すれば、将来のインフレを映す10年債利回りが3%を大きく上回る可能性も指摘される。

なおFOMCでは貿易戦争懸念でも利上げ続行と討議されている。対して10年債市場は貿易戦争懸念で安全性を求めるマネーが債券に流入すると利回りは下がる。貿易戦争は長短金利差縮小圧力を強めそうだ。

3%の攻防を市場は注視している。

なお米中貿易戦争懸念で、一時1230ドル台まで下げたNY金も1260ドル前後までリバウンド。

2018年