豊島逸夫の手帖

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米国イラン核合意破棄を読む「勘所」

2018年5月9日


遂にトランプ大統領がイラン核合意破棄を宣言した。
想定内のことゆえ原油市場では「噂で買ってニュースで売る」的な投機筋の動きも見られる。
とは言えNY市場では「トランプ大統領就任以来最大の政策変更」とも言われ、中東情勢が北朝鮮と並び大きなリスク要因として意識される。


今、なぜ核合意破棄なのか。
苦戦が予想される中間選挙を睨んだトランプ大統領の政治的決断ゆえのことであろう。「選挙公約の実現」である。今回も「私は約束は守る。」と強調している。

大統領選挙期間中からイラン敵視を露わにして、イラン核合意を「愚かな行為」と位置付け破棄を主張してきた。メジャー石油会社のトップから転身したティラーソン前国務長官の親イラン姿勢が気に入らず結局更迭したという経緯もある。


「イランは核開発を続けている。シリア介入を口実に中東圏でのシーア派勢力拡大を画策している。イスラエルを特に敵視している。弾道ミサイル開発も進めている。」との嫌イラン発言を繰り返してきた。就任後真っ先にサウジアラビアを訪問。さらに5月にはイスラエルの米大使館はエルサレムに移転。敢えてイランの神経を逆なでして挑発してきた感が強い。
(ちなみに日本は既にかなり深い経済関係をイランと築いてきたので、イランへの経済制裁再開には複雑な思いだ。安倍首相も今回中東訪問では敢えてイランを外さざるを得なかった。)


では、トランプ大統領の次の一手は何か。特に、今後イランとの核合意堅持を主張する英独仏とどのような折り合いをつけるのか。
今回の経済制裁再開のポイントは、イランと通商・金融関係を持つのなら、その国の米国経済へのアクセスも禁じるという(お馴染み)米国第一主義だ。イランとの商売とアメリカの商売とを天秤にかけて選択を迫る「踏絵」のようなものとも言える。


とは言えEUとは既に通商問題で摩擦が強まっている矢先のこと。
トランプ大統領としても、これ以上欧州と分裂を深めることが得策でもあるまい。
凄んで見せて実際にはイランとの通商国に対する懲罰的措置は控えるかもしれない。
米国は勝手にイラン核合意の枠から出ていくが皆の衆は勝手にしたまえとすれば、選挙公約実現のメンツも立つし対欧州関係も妥協を計れる。


とは言え、トランプ大統領は中東地域において、エルサレムへの米大使館移転に次ぎまたもや「パンドラの箱」を開けてしまった。
今後シーア派の国とスンニ派の国が対峙する最前線「ホルムズ海峡」の緊張は高まろう。日本の原油輸入の多くが通過するこの狭い海峡が軍事封鎖されれば、日本の産業全体に計り知れぬ影響が拡散するは必至だ。他人事ではない。

具体的な軍事衝突としては、イスラエルのイラン核関連施設空爆の可能性が現実的となる。既にイスラエル首相は記者会見で、自らが
イラン核施設を見つけたと大々的なプレゼンテーションを行ったばかりだ。
イラン側に目を転じると強硬派と現実派のせめぎ合いが顕著だ。


なんのかんの言っても経済制裁は困る。しかしここで屈するが如き姿勢も絶対に見せられない。国内にも国外にも。
ミサイルを撃ち込まれれば何らかの報復に出るしかない。さもなければ国内向けに「義」が立たぬ。
中東情勢がマーケット視点でも見逃せなくなった。


特に金価格はイラン緊迫で急騰した事例が過去にも多い。イラン革命、テヘラン米大使館人質事件など若手の読者は知るまいが、金価格が当時(1980年代)の史上最高値875ドルをつけるキッカケになっている。当時金価格は4倍に跳ね上がった。
今の成熟した金市場ではさすがにそれほどの乱高下は見られない。とは言え、地政学的要因として、年内に限っては後退の兆しが見られる北朝鮮よりイランにNY市場の注目が集まる可能性が高いことを当地で痛感しているところだ。


さーて、NY出張も10日目。サンドイッチ、クロワッサン、マフィンの高カロリー朝食が続き、夕食は肉食系漬けでそろそろ日本食禁断症状が出始めたよ(笑)。もう筍の季節は終わったかな~~。そろそろ鮎の季節だな~~。6月になったら北海道のウニも旬だな~~。7月の祇園祭りになると京都も鱧の季節やな~~。毎晩妄想にふけり就寝しておりまする。。。。


ところで、ニューヨーカーの友人たちの大ブーイングを浴びつつNY郊外のトランプ氏経営ゴルフ場でプレーしてきたよ。これも市場現場視察の一環という「義」ならぬ「口実」も立つし(笑)。グリーンフィーが200ドルと米国人感覚ではripoff(ぼったくり)。まぁ、こちとら首都圏接待ゴルフ場で週末3万円とか4万円を見慣れてきたから、そんなものかという程度だけどね。ゴルフの値段は日本は高いよね。米国では20ドル30ドルが大衆相場で50ドル超すと「高級ゴルフ場」になる。日本でも5000円と言えば福島県なら普通かやや高めの値段設定。さすがに2000円はあまり見ないが3000円なら時折見かける。しかし首都圏ではそんな低価格はあり得ない。日本における若者のゴルフ離れは当然とも言える。なお、このゴルフ場のパー3でトランプ氏がホールインワンを出した(190ヤード、7番アイアン)と豪語しているが、噂のお相手は「7番アイアン!?4番アイアンくらいじゃなかったかしら。」だと。


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写真は37階ホテルの部屋からの夜景。赤いイルミネーションがエンパイアステートビル。左遠景に新ワールドトレードセンター。私がゴールドディーラーとして働いたスイス銀行NY支店がそこにあった。


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2018年