豊島逸夫の手帖

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米中株式共倒れリスク

2018年6月26日

米中貿易摩擦懸念でNYダウ平均の下げ幅は400ポイントを超えていた。ムニューチン財務長官の「中国企業への投資規制報道はフェイクニュースだ。中国に限定せず米国の技術を盗む国が対象だ。」とのツイートが火に油を注ぐ展開になっていた。

そこに強硬派ナバロ氏が経済テレビCNBCに生出演。一転、火消し発言に出た。

「今日の市場は過剰反応だ。どの国にも投資規制の具体的計画はない。モメンタムトレーダー(投機筋)の動きだ。しかし長期投資家にとって減税、規制緩和、エネルギーコスト低下、何か気にいらぬことがあるか。」

これを受けダウ平均の下げ幅は300ポイント超にまで縮小した。

ところがサンダース報道官は「全ての国を対象に投資規制の声明が近々出されるはず。」とムニューチン・ツイートを肯定している。

この政権内不一致が市場の嫌う不透明感を増幅させる。

トランプ大統領も株価上昇を自らの手柄として常々強調してきたので、自らが招いた「貿易戦争懸念」が株売りの連鎖を誘発している現状を持て余しているのだろう。

更にこの貿易摩擦要因がFRBの利上げ回数に影響を与えるとの見方も再び台頭してきた。前回のFOMCで年4回説が優勢になったものの、実態はFOMC参加者の1人だけが3回から4回に変わっただけだ。3回説、4回説が拮抗している状況に変わりはない。

グローバルな視点では米中貿易戦争懸念が米中株安連鎖を誘発していることも市場の不安感を煽る。上海株が節目の3000を割り込み弱気相場入りした後、昨日のNY株急落でダウ平均が200日移動平均線を割り込み弱気相場入りの兆しとされている。

習近平国家主席の口調も激しさを増す。「西側では左の頬を打たれれば、右の頬を出すと言う。我が国の文化では殴り返す。」と報復を表明している。構造改革路線から成長重視に軸足を戻し、形振り構わぬ人民元安誘導も市場では懸念される。

経済成長減速が失業を増やし社会不安醸成を怖れる習近平氏と、中間選挙しか頭にないかの如きトランプ氏。両氏が焦れば焦るほど株価には下げ圧力がかかる。

マネーの流れも、米国債への逃避が加速。米10年債利回りも2.8%台まで下がっている。景気後退の前兆とされる長短金利差(スプレッド)の縮小も加速してきた。VIXは16台まで上昇中だ。金だけ蚊帳の外。中国は世界一の金需要国だから中国経済が鈍化すると宝飾需要や電子部品需要が減る懸念あり。

市場は見え透いたトランプ政権の火消し発言でも「トランプ・プット」と歓迎のポーズを取らざるを得ない。ややタカ派的と見られる現FRB議長のパウエル・プットは期待できそうにない。イエレン・プット、バーナンキ・プットとFRB議長の「救済発言」に慣れきった市場は心もとなく感じているようである。

なおハーレーショックも見逃せない。トランプ氏が米国内生産のお手本企業として褒めちぎっていたハーレーダビッドソンが、最大の顧客=EU向けの生産を米国外に移す検討を表明した。EUの報復関税によりEUに輸出する時に課される関税が6%から31%に上がるからだ。これは一台あたり2200ドルのコストアップ。アナリストの同社業績予測も5%から8%の減益を見込む。しかも同社があるウイスコンシン州は米大統領選挙でキー・ステート(鍵を握る州)だった。

最後に山形から直送のサクランボの写真。毎晩ワールドカップ観戦とNY相場をフォローしながら(笑)サクランボを食べまくってます~~。

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2018年