豊島逸夫の手帖

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謎のドル金利急騰

2018年4月23日

米10年債利回りが2.96%まで急上昇。今週は3%の壁に挑戦の様相だ。

「アナリストやトレーダーは理由探しに追われている。」

FTは市場取材結果をこのように表現した。要は、なぜ先週木・金曜日にドル長期金利が急騰したか。市場内では諸説紛紛なのだ。

最も一般的な解説は「原油価格急騰でインフレ懸念浮上」。

TIPS(物価連動国債)が売れて普通国債との利回り格差が拡大していることが指摘される。

長短利回り格差を示すイールドカーブが歴史的な平坦化(格差縮小)を示しているが、先週は僅かながらも立っていた(格差拡大)ことも注目される。

しかし、インフレヘッジの代表格である金の価格は先週木・金曜日に1355ドルから1335ドルまで急落している(これは北朝鮮核実験ICBMミサイル発射中止発表前の動きだ)。

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次に指摘されるドル長期金利急騰要因は米国債市場の需給に基づく。トランプ政権の積極財政政策により米国債増発は不可避。一方、米国債最大の買い手であったFRBはバランスシート縮小を粛々と進め、米国債保有量を減らしつつある。その結果10年債利回りがトレンドとして3%突破しても不思議はなかろう。

とは言え、これまでドル金利上昇を抑えてきた構造的要因に先週大きな変化が生じたとも思えない。

グローバリゼーション、ロボット導入等による効率化、マクロ的な貯蓄増加傾向、携帯電話等通信料金下落、アマゾン現象と言われる流通効率化などが容易に変わるはずもない。

それでも市場の金利高予測は強まっている。

CMEのFEDウォッチによる利上げ確率も6月利上げは98%でほぼ織り込み済み。9月利上げ確率も74%。12月利上げ確率も38%まで上昇中だ。パウエル新FRB体制をややタカ派とも見て、年4回利上げが徐々に勢いを得ている。

外為市場でも徐々に金利に対するドルの感応度が強まり素直にドル高円安傾向が醸成されている。市場要因としては、週末の北朝鮮発表には懐疑的な見方が多く金利要因の注目度の方が高い。

今週3%の壁を突破すれば、108円台での推移も見込めよう。

NY金は金利高・ドル高が相場のアタマを叩いた。

週末の北朝鮮核実験、ICBM発射実験中止の発表も土曜の朝の時点ではサプライズ感があり北朝鮮リスク後退を想起させた。しかしその後月曜朝までの48時間で懐疑論も強まり、トランプ大統領のツイッターもトーンダウンして市場への影響は若干円安、若干NY金下げ程度である。やはり金利要因の方が持続的に効く。

さて、本日発売の週刊エコノミスト。表紙が「ドル沈没 1ドル=80円の暴落も ユーロ・人民元の3極へ」

カバー記事にコメントが引用されているが、80円と言うのは5~10年の長期的可能性で2018年予測ではないよ。ドル・ユーロ・人民元の3極へ。金復権も。記事は同誌HPにアップされている。↓

https://www.weekly-economist.com/2018050108feature/

2018年