豊島逸夫の手帖

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ティラーソン国務長官更迭の衝撃

2017年12月1日

今のトランプ政権では最も「まとも」とされるティラーソン国務長官が更迭されると米国内では報道されている。北朝鮮に対しても一貫して外交・話し合いで解決策を模索してきた。好戦的なトランプ大統領に「殿、ご乱心。」と言える稀有な存在だ。

実は現在発売中の日経マネー「金」対談で、筆者は来年の地政学的リスクの話で、まず「1月ティラーソン辞任」を挙げていたので、やっぱりという感じだ。

対談でのコメントは以下の通り。

「僕は地政学的要因として1月に米国のティラーソン国務長官が辞任すると考えているのですよ。今、トランプとティラーソンの間に決定的な溝ができていて、これはどこかで破たんする。来年早々にも、ティラーソンは嫌気がさすんじゃないか。そうなると、まずやばいのは、北朝鮮に対しても、外交手段での解決という声が弱くなる。もうひとつはイラン。具体的に言うと、ティラーソンの辞任で、一方的に核合意を破棄、イラン独自で核開発を再開する。それに対抗してサウジアラビアもここぞとばかりにイランに攻め入る。となると、ペルシャ湾を挟んで、スンニ派とシーア派の対立も含めて、中東情勢が一気に悪化する。原油と金が同時に上がるというシナリオも考えられる。僕がさっき1325ドルと言ったのは、これ。で、僕はないと思うんだけれども、もし北朝鮮が軍事衝突起こしたら、これはもう全く異次元。」

更迭説の背景は、我が儘なボスに嫌気がさしてティラーソン氏が会議中に思わず「moron」(アホ)と呟いたことが報道されたこと。当然トランプ大統領の知るところとなった。昨晩記者会見でトランプ大統領は本件について早速聞かれていたが、明確な回答を避けたので益々信憑性が高まっている。

もし、彼が抜けると、もはや、発足当時の政権メンバーで残っているのは娘イヴァンカさんと娘婿クシュナー氏くらい。

因みに、国務省というのは外務省なのだが省内の局長以下の官僚ポストは未だに半分程度しか埋まっていない。要は機能不全。トランプ大統領とティラーソン国務長官の二人で実質的に切り盛りしてきたと言っても過言ではあるまい。

北朝鮮に対して核攻撃のボタンを押しかけたところに待ったをかける要人が去ることは、日本としてもかなり心配な状況だ。後任は軍部出身との噂もある。

2017年