豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 8月29日・30日のブログ
Page2381

8月29日・30日のブログ

2017年8月30日

北朝鮮ミサイル上空通過、有事の円買いは限界に (8月29日記)

日本領土上空を北朝鮮ミサイルが通過したとのニュースに今回はヘッジファンドも反応薄だ。筆者の周辺も日本側は有事モードだが、NY側は拍子抜けするほど動きがない。米国内はハリケーンによる「前代未聞のテキサス大洪水」の報道一色。商品市場でもエネルギーセクターへの影響がまず注目されている。

通貨取引面でも、さすがに北朝鮮情勢の緊迫度がここまで高まると、当該国の通貨買いは躊躇われるようだ。寧ろ円買いポジション巻き戻しのタイミングを模索する動きが見られる。

円高も確かに108円台前半まで進行したのだが「円高加速」の切迫感はさほど感じられない。

そもそも、今の欧米外為市場はユーロ中心に動いている。ECB量的緩和縮小観測は根強く、ユーロ買い・ドル売りが「旬のトレード」になっている。その余波がドル安・円高を誘発している構図だ。そこに人種問題に発するトランプ政権不安が、債務上限引き上げ難渋・米国債格下げリスクと共振してドルの信認が低下している。相対的に北朝鮮発有事による円買いのインパクトは限定的だ。これ以上北朝鮮情勢が悪化すれば、円売りに転じる可能性を秘める。

ここは冷静な見極めが必要であろう。

北朝鮮有事の円買いから円売りに転じたのか (8月30日記)

北朝鮮ミサイル日本上空通過後、108円半ばまで円高が進行したが、NY時間帯では結局109円台半ばに戻った。結果的には今回の北朝鮮有事で円安に振れたことになる。これで今後は北朝鮮関連地政学的リスクが円安要因となるのだろうか。

結論から言えば、リスクオフの円買いが市場から消えたわけではない。日本が北朝鮮ミサイルの標的にされ、危ういとの危機感から日本円が売られたわけでもない。

NYではハリケーンによる「前例なき規模のテキサス大洪水」に市場の関心が集中している。自国領土の上を北朝鮮ミサイルが通過するという日本側の緊張感は共有されていないのだ。事態がここに至っても軍事衝突はあり得ないとの楽観論が大勢を占める。

本当に北朝鮮有事で円が売られるとすれば、軍事衝突のケース以外には考えにくいということだろう。

昨日NY市場での円安は投機筋の「噂で買ってニュースで売る」という円買いポジションの手仕舞いが主たる要因で、積極的な円売り・ドル買いポジションの醸成とは言い難い。

目下の市場の関心は債務上限問題、そして大型減税案進展の可能性にシフトしている。後者についてはコーン国家経済会議委員長の「今週トランプ大統領から大々的な発表あり。」との発言が市場の期待感を誘っている。

北朝鮮情勢より金融・財政政策が主たる変動要因と見るべきだろう。

2017年