2017年12月19日
「米」は米国、「英」は英国、「独」はドイツ。では「愛」は?答えは愛蘭土=アイルランド。
この「愛の国」は教育水準も高く勤勉な民族で国内治安も良く景色も美しい。英国エコノミスト誌が欧州で最も住みやすい島に選んだこともある。特に米国では3600万人もの愛系米国人が活躍してきた。ジョン・F・ケネディー、レーガン、クリントンからグレース・ケリー、マライア・キャリーまで。
しかし、彼らの先祖が米国に移民してきた背景には愛の国と英国の過酷な歴史があった。じゃがいも飢饉である。19世紀半ば愛の国民の大半は農業に従事し殆どが小作農家で地主、貴族は英国に住んでいた。そこで地代を納めずに済む小さな庭でじゃがいもの生産を始め、これが主要食物となった。
ところが欧州でじゃがいもの疫病が発生。欧州の他地域では貴族や地主が農民を救済したが、ブリテン島に住む愛の地主たちは緊急食糧配給などを躊躇し人口650万人のうち100万人が死亡。さらに100万人が米国やカナダなどに新たな地を求めた。
1997年に英ブレア首相がじゃがいも飢饉につき正式に謝罪したものの、愛の国には未だに底流として反英親米感情が残る。ちなみに第二次世界大戦では全ての英連邦諸国が対日参戦する中でアイルランドだけが拒否。大英帝国戦艦が相次いで日本軍に撃沈されたニュースを聞き歓喜したという。
日本人との共通性も多い。島国特有と言えようか同民族の閉鎖的結合が強く、良くも悪くも仲間内で助け合いかばい合う。
良い意味では欧州金融危機の際に超緊縮政策を強いられても、まずは「皆が耐えているのだから私も耐えねば」という自制が働く。逆に悪い面としては知人を非難しにくい風潮。銀行監督官庁も民間銀行の放漫経営に対してなあなあ主義で対応した。
それでも産業基盤があるのでギリシャと異なり経済危機後、真っ先に国債市場にも復帰したものだ。例えば、インテルなど米国大手ハイテク企業の多くは欧州本部を首都ダブリンに構える。基幹産業がコルクとかオリーブ油というギリシャと根源的に異なる国なのだ。筆者も財政危機になったら国がどうなるかの予告編を見たくて南欧諸国を廻ったが、ギリシャで絶望しアイルランドで希望を持ったものである。