豊島逸夫の手帖

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利上げ回数減少、新たな要因浮上

2017年5月25日

2017年年内利上げ3回説が後退する兆しが見られる。

年内2回か3回か、これは市場にとって大きな影響がある命題だけに注目度は高い。

その震源地は、24日に発表された5月2~3日のFOMC議事要旨。

市場の想定より遥かに詳細に年内FRBバランスシート縮小が議論されていたからだ。

そこで市場の注目点は、年内バランスシート縮小を開始するのなら、利上げは少なくとも「一回休み」になるのではないか、との可能性だ。

既に、イエレン議長に近いとされるNY連銀ダドリー総裁や、イエレン議長が出身のサンフランシスコ連銀ウィリアムズ総裁が、バランスシート縮小をするなら、利上げペースも相当に緩やかにすべき、と論じている。両者、同時に発動しては市場への引き締め効果が強すぎる、との判断だ。ブレイナードFRB理事に至っては、バランスシート縮小は利上げの代替手段とまで言い切っている(但し、ハト派の代表格である同氏も、トランプ政権の掲げる大型財政政策が本当に実行されるなら、利上げ容認の姿勢である)。

FOMCでここまで資産縮小議論が展開されたのは、量的緩和で国債MBSを「爆買い」した結果、FRBは巨額の債券を抱え、資産総額は異常に膨張して4.5兆ドルに達したからだ。

これから利上げすれば、この巨額保有債券は値下がりして、FRBは大きな損失を被る。それゆえ保有債券額を減らす必要がある。これはリーマンショックへの有事対応として実行された異常な金融政策を正常に戻すことでもある。量的緩和の後始末とでも言えようか。これがFRBバランスシート縮小と呼ばれる。利上げとともに有力な金融引き締め政策となるので、市場の注目度が高い。

しかし、FRBが国債MBSを買いまくり、対価として払う通貨ドルを市中にばら撒くのは容易だが、これを吸い上げ市中に流通している通貨ドルを減らすとなると「過剰流動性依存症」気味のマーケットにショック反応を誘発するリスクがある。そのリスクの例として必ず引き合いに出されるのが、2013年5月の「バーナンキショック」だ。当時、フル回転で進行していた量的緩和の「縮小」(いわゆるテーパリング)を当時のFRB議長バーナンキ氏が「示唆」しただけでマーケットは大混乱。株は急落した。当のバーナンキ氏も自身のブログで、資産縮小するならとにかく慎重に、と強調している。

その経験を踏まえた上で、今回FOMCで議論された「FRBバランスシート縮小」の方法は、実に慎重でマーケットへのショックを最小限に食い止める工夫がなされている。

まず、いきなり保有債券を市中に売りに出せば、市場混乱は必至だ。ヘッジファンドなどが投機的目的で買い手に廻る可能性がある。

そこで、満期を迎えた債券に目を付けた。保有債券の中で償還を迎える部分は、放置すれば元金が保有者としてのFRBに戻ってくる。これは、市中から通貨ドルを引き揚げるに等しい。

実は、これまで償還を迎える保有債券については、戻ってきた元金で再び債券を買っていた。結果的にFRBの資産総額も減らさなかった。これは金融緩和政策の延長と言える。

しかし、今回のFOMCでFRBの資産総額に上限を課すること、その上限は3か月ごとに経済状況を見ながら柔軟に減らしてゆくこと、その上限を上回る額については、償還を迎えた債券を「再投資」することなく、FRBの保有債券額を自然に減少させることが議論された。ここまで具体的にFRBバランスシート縮小がFOMCで話し合われていたこと自体が市場にとっては驚きだったのだ。

今後6月利上げは織り込みつつ、資産縮小議論に関するFRB要人発言を材料視して、9月、12月に利上げするか否かが、市場では活発に議論されることになろう。

長期的には4.5兆ドルを最終的にどこまで減らすのか、という点も重要だ。2兆ドルから2.5兆ドル程度は残す必要がある、との議論が根強い。市中に出回る通貨量が以前より遥かに増えていること、そこでその量を調節する金融政策手段もFRBとしては切り札のひとつとして持っておきたい、との意図も透ける。

とは言え、非伝統的金融政策の量的緩和も初体験であったが、量的引き締めも全くの未体験ゾーンである。

来年任期終了を迎えるイエレン議長としては、少なくとも金融正常化の道筋だけはつけて、後継者にバトンタッチしたいところであろう。

そこに、トランプ大統領には「私は低金利を好む。」と先制攻撃発言をされてしまった。これまで「データ次第」と繰り返し、政治的独立性も死守してきたイエレン議長だが、実質的には「トランプ次第」の様相も呈している。

年後半のドル安・円高要因として、米国金融政策の新たな展開から目が離せない。

そして、今日の写真は(糖質制限中の禁を破って 笑)スイーツ!

昨日、打ち合わせで行った新しく出来たホテル「アスコット」。

そこで供されたのが、パクチー+バニラアイス+ピーナッツ粉+キャラメル風味の台湾スイーツ。アスコットはシンガポールの高級ホテルだから、当然食材もアジアエスニック系が多い。

このピーナッツやキャラメルなどをカチカチに固めたものをカンナで削る実演つき。

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小麦粉の薄焼きクレープの上に、そのピーナッツ粉を敷き、アイスとパクチー(!!)を乗せて包む。パクチーがダメな人はダメだけど、実はスイーツと相性が良い。台湾では、えらく人気らしいね。気に入った。アスコットも高層ビル上層部の静かな環境で、屋外のテラス席も気持ち良い。未だ宣伝していないから、空いている穴場。なんて書くと、たちまち混みあいそうな予感(笑)。 ランチはアジア系のビュッフェ。デザートはビュッフェコースを注文した人へのサービスだと。

2017年