豊島逸夫の手帖

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トランプ氏とイエレン氏のせめぎ合い

2017年1月4日

新年初日のNY市場ではプラチナが4%以上急騰で始まった。

株高ドル高にもかかわらず、900ドル前後という値頃感から買われた。昨日のNY株は、ダウがいきなり170ドル前後まで買われた後、原油が急反落して失速した。トランプ相場への警戒感がプラチナ急騰の背後に透ける。日本株の初日は日経平均400円以上の急騰。皆、こんな価格水準から買っていいものか、おそるおそる、だけどね。

さて、今年の市場一般だが、イエレン氏とトランプ氏の両者に目配りが必要だ。2017年の相場は、中央銀行主導から積極財政・金融正常化のポリシーミックスの時代への移行過程にあるからだ。

トランプ氏の発するメッセージは「法人税減税、規制緩和、インフラ投資でビジネス環境を改善するから、米国内で製造せよ。メキシコや中国で製造されたものには高関税を課す。まずは、米国人の雇用を増やせ。」極めて保護主義的なメッセージだが、企業活動活性化の政策とパッケージで提示されると、株価は上がる。市場にとって厄介なのは、いつなんどきツイッターでどの企業が狙い撃ちされるのか予測不能なことだ。昨日のGM車メキシコ生産への警告も、同社にとっては寝耳に水のことであったろう。その数時間後に、フォードが、メキシコ工場建設断念を発表したことも、決して偶然ではなかろう。

いっぽう、イエレン氏率いるFRBは、FOMC参加者の多くが年間3回の利上げを見込む。トランプ相場が過熱すれば、3月の利上げさえ意識される。CMEのFEDウォッチでは、昨日、3月利上げ可能性が、前回より4%上昇して、24%となっている。同じく昨日発表された中国製造業PMI、そして米国ISM製造業景況感指数ともに良い数字であった。とはいえ、トランプ次期大統領の経済政策が市場の期待を満たさねば、市場が混乱して、利上げどころではなくなる。2016年は利上げが「データ次第」であったが、2017年の利上げは「トランプ次第」の面も無視できない。

更に大きな問題は、長期的に、超低金利時代から脱却するのか、ということ。

これまでローレンス・サマーズ教授が論じてきた「長期停滞論」が、トランプ氏登場により、本当に変わるのか。ベビーブーマーの退職や、移民規制強化、ロボット・AIの進化による労働人口動態の変化という構造的問題は残るだろう。いっぽう、市場内部要因としては、債券に偏った運用の巻き戻しが、債券売り、利回り反騰を招いている面も否定できない。株式から債券へのローテーションということであれば、市場は既に織り込みつつある。

この金利上昇の持続性は、ドル円相場に、直接的影響を与えるので、注視せねばならない。ちなみに、日銀のイールドカーブ・コントロールによる長期金利上限が引き上げられる可能性も2017年通年では視野に入る。ドル金利上昇・円金利固定による日米金利差拡大という円安の構造がいつまで続くか注視する必要があろう。

そして、米中問題も、トランプ氏の露わな対中強硬姿勢と、中国リスクを利上げ抑制要因と見るイエレン氏の立場を複眼で見据える必要があろう。米中通商戦争の可能性や南シナ海軍事緊張は地政学的要因として潜在的円買いの材料となる。

いっぽう、米利上げ先送りは金利差縮小によるドル売り・円買い要因となる。

トランプ氏のFRBへの介入の可能性も含め、両者の動きから目が離せない。

とにかく、未だ始まったばかりの年。この1年は長いよ~~。

年末年始もマーケットは動いたね。詳しくはツイッター@jefftoshima 参照。

今年も気張ってゆきましょ!

2017年