2017年2月28日
明朝のトランプ演説に、世界の投資家、市場関係者が身構えている。
東京市場の時間帯に行われるので、トランプ大統領の一言一言に株・円が反応する「ライブ」な相場になりそうだ。
市場が注目する点としては、まず、経済通商政策に、どの程度、時間を割くか。移民・IS問題などが優先されることは充分に考えらえる。その場合、政策の具体的内容の決定に手間取る印象を与えよう。
次に、経済関連のトピックとしては、なんといっても個人法人減税であろう。2~3週間のうちに「驚異的」な税制改革を発表するとのトランプ発言が、期待感を高め、NY市場13連騰の最大要因となった。とはいえ、広範な税制改革の内容を2~3週間で決めるのは無理筋だ。おそらく、大筋を行程表などで提示して、具体性をもたせるだろう。事実、ムニューチン財務長官は、財政政策につき8月までに議会を通すと明言している。これを、トランプ大統領みずからが語れば、市場には一定の安心感が生まれよう。但し、マーケットが8月まで待てるか。半年は長いので、その間、焦れる可能性がある。
税制関連のもう一つの目玉が国境調整税だ。
特に、減税分は、他の税収増で賄い、財政赤字には「中立的」にするのが共和党の考えゆえ、そこで国境調整税導入が、トランプ税制には欠かせない。しかし、肝心のトランプ大統領の同税に関する発言が揺れて定まらないので、議会演説でどのように表現するか、極めて重要なポイントとなる。もし、国境調整税導入に確定的発言をすれば、輸入製品販売が多い米国小売業には大きな打撃となる。いっぽう、輸出業者には朗報となり、勝ち組・負け組の差が鮮明となろう。
そして、中国。
ムニューチン財務長官は、「通商」と「通貨」を分けて考える姿勢を打ち出している。
通商面では、「黒幕」とさえいわれる対中強硬派バノン首席戦略官の影響が、どの程度、滲むのか。いっぽうで、中国製品に45%課税を選挙期間中に唱えていたトランプ大統領も、就任後は宥和的発言をしている。通商面の落としどころとしては、選択的に特定製品の関税引き上げなどが、一般論として浮上している。日本との貿易問題は、副大統領と副首相の「日米経済会議」に委ねられており、今回の議会演説で日本の名前が語られることはあるまい。
通貨面では、「中国為替操作国」認定に関し、ムニューチン財務長官は、4月の「為替報告書」発表を待つとして、トランプ大統領と一定の距離を置いた。果たして、議会演説で、どのように語るか。大いに注目される。円には、まず言及なしと思われる。
とはいえ、強いドルは、マクロ米国経済の力強さを示す指標だが、弱いドルは、米国製造業の雇用には追い風となる。このジレンマの中で、トランプ大統領の口から、「長期的にはドル高歓迎だが、短期的にはドル安もありうる。」かのような発言が飛び出せば、円高を誘発する材料扱いされそうだ。
「雇用、雇用、雇用」の保護主義的言動の過程で、日本も巻き添えになるケースはリスクシナリオとして見ておくべきだろう。
しかし、総じて、国内のオバマケア・移民規制、国際面での北朝鮮・イラン・イスラエルなどが主たる議論になり、日本株・円が大きく振れる可能性は考えにくい。但し、日本株の銘柄別には、影響を受ける事例も出てきそうだ。
金は一時1260ドル台まで急騰したが、結局1250ドル台で、推移している。プラチナも1040ドル前後まで急騰。
ヘッジファンドの金買いが目立つ。
振りかえれば、1130ドル前後まで下がったときから、短期的売買を繰り返しながら、レンジの下値をジワジワと切り上げてきた。今後も、そのような展開になりそう。但し、ここまで来ると、中国・インドの現物需要はついてこない。先物ETF主導の展開になる。