豊島逸夫の手帖

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Jアラート鳴るなかでの日本経済再生議論?

2017年9月26日

安倍首相の解散表明から数時間後に北朝鮮外相が「米宣戦布告と見なし、領空外での米機も攻撃対象。」との発言で有事相場が一気に再燃した。特に、北朝鮮軍末端での偶発的軍事衝突リスクが高まったとの懸念が指摘される。NYダウは一時100ポイント超の下げ。原油高でも株安になったことが地政学的リスク懸念の強さを物語る。ジワリと上昇中だったドル長期金利は反落。外為市場では有事の円買いで112.20円台から一時111.50円前後まで円高に転じた。利上げで売り一色だった金市場でも突然の有事相場復活。割り込んでいた節目の1300ドル大台を急速に回復した。

日本株市場もJアラートがいつ鳴るか気にしながら、長期的日本の財政問題などを論じる巡り合わせとなった。北朝鮮リスクのピークを経済制裁が効いてくる年末にかけてとの読みも、同国外相宣戦布告見做し発言で俄かに修正を迫られる。前例のない有事環境のなかでは、過去の解散相場との日本経済マクロ指標や株価比較も前提条件の再考が必要となろう。

NY市場関係者と話していると、北朝鮮問題当事国がこのタイミングで議会解散・総選挙に踏み切るということに当惑が感じられる。結果的に政権基盤が強まれば、政策期待に拠る日本株買いの「大義」も論じられよう。とは言え、欧米市場の視点では「唐突感」の強い解散表明が、日本の財政リスクという寝た子を起こす如き成り行きにもなっている。

辛口のヘッジファンドなどからは「北朝鮮からの氷山が漂流する海域で、海図なき航海を強いられるタイタニック号の中で、船長がナビゲートしつつ、ざわめく乗客に自らの信認を問う行動に出た。」とのコメントも聞かれる。

一方、リアルマネーといわれる長期投資の年金基金の間では、メルケル首相選挙「辛勝」、右派台頭、ブレグジット難航が気になる欧州株からの分散対象としての日本株期待論も散見される。標準的議論では北朝鮮軍事介入のシナリオは非現実的とされ、長期スパンでは地政学的リスクは一過性と見做される傾向もある。

かくして北朝鮮リスクに関しては市場内で様々な見方が交錯する。世界の市場がトランプ大統領対金北朝鮮委員長の「口撃合戦」対決に揺れるなか、安倍首相対小池都知事の駆け引きに注目が集まる日本市場との内外温度差が鮮明だ。

なお、有事の金買いで1300ドル台を回復したが、最近の高値1360ドル台にはほど遠い。今回も有事の金は一過性と見る。レンジ相場となりそう。今晩のイエレン議長講演に注目。

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2017年