豊島逸夫の手帖

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イエレン氏からのバレンタインギフトは「円安」

2017年2月15日

日本株の最良の薬は、やはり「円安」。それを、イエレンFRB議長が、議会証言の場で、早期利上げも辞さずと発言することで、プレゼントしてくれた。

いっぽう、トランプ氏は、「フロリダ・ゴルフ接待」により、日本株への安心感というお土産をくれた。

その間、北朝鮮弾道ミサイル発射、フリン補佐官辞任、そして東芝問題と、株にとっては逆風も吹いた。

しかし、市場では、近々発表とされる「驚異的」なトランプ税制改革への期待感が依然強い。

更に、皮肉なことだが、米国カリフォルニア州のダム決壊危機の衝撃的な映像も、米国インフラ投資の遅れを際立たせる結果になっている。

とはいえ、イエレン・トランプ両氏競演による日本株高も、トランプ氏のツイートひとつで瞬間的にひっくり返るリスクを秘める。いま、市場がひそかに懸念するのは、FRBの利上げに対して、トランプ氏が、批判的に言及するシナリオだ。その根底には、FRBへの政治的介入の可能性が根強く意識されている。大手投資銀行や経済メディアでも、ワシントン支社・支局を急遽増員して、情報収集を強化する動きが出始めている。「政治相場」を象徴するような現象だ。

FEDウォッチャーもムニューチン氏の財務長官指名承認を受け、「財務省」への目配りを怠れない。

イエレン氏も昨日の議会証言で、財政政策の帰趨が読み切れないことをリスクとして言及していた。

立場上、多くを語れないイエレン氏を代弁するかのように、いまや自由の身のバーナンキ氏は、ブログでトランプ財政政策の具体性に疑念を呈している。「共和党が本気で大規模財政支出を許容するのか。官民パートナーシップによる資金調達に頼るのであれば、おのずとインフラ投資の規模も限定されよう。税制改革も、問題は中身だ。個人所得減税以外は実現性が不透明だ。」と述べている。

ちなみに、バーナンキ氏は、2013年5月に自らが「テーパリング=緩和縮小」に言及したことで、市場が大混乱に陥ったことが未だに気になっているようだ。昨日の議会証言でも問われた「FRB資産縮小問題」には努めて慎重に当たるべしと、ブログで警鐘を鳴らしている。金融専門家集団が最新の注意を払って進めるべき事項が、気性の荒い大統領の一言で大きな影響を受けかねない。

更に、イエレン氏とて、元来はハト派である。インフレ指標、賃金指標などが伸び悩めば、一転、利上げ慎重論を語るかもしれない。

2017年の日本株と円相場動向を見るうえでは、ワシントンのFRBとホワイトハウスの動きから目が離せない。

なお、金は1220ドル台。やはり下げても限定的。それだけリスクが気になる地合いなのだ。

2017年